著者
西垣 哲太 加藤 英明 鈴木 智代 佐野 加代子 中村 加奈 堀田 信之 佐橋 幸子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.132-139, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
21

背景:抗菌薬適正使用支援(AS)の中核をなすのは前向き監査と臨床へのフィードバックである.しかし,そのための業務時間を確保することは時として困難である.2018年4月診療報酬改定での加算による専従職員の確保がAS業務に与えた影響を解析した.方法:2017年4月から2020年3月までの36カ月の1,094件のAS介入症例を後方視的に分析した.この間,当院の抗菌薬適正使用支援チーム(AST)は専任医師1名と専任薬剤師(勤務時間の50%をASTに従事)による週に3回の活動(期間A),専任薬剤師による平日毎日(期間B),専従薬剤師(同80%)による平日毎日(期間C)でAS活動を行った.それぞれの期間でのASTによる介入件数,臨床医の受け入れ率,対象患者の入院期間,30日死亡率,院内の抗菌薬使用量(DOT/1,000 patient-days)を比較した.結果:期間AからCにおける月あたりのAS介入件数の中央値は,それぞれ18,27および47件であった.AS介入件数は医師の受け入れ率と正の相関があり(R=0.685,p<0.001),広域抗菌薬使用量(R=-0.386,p=0.020)およびcarbapenem系抗菌薬使用量と負の相関があった(R=-0.614,p<0.001).臨床医の受け入れ率は期間Aと比較して期間Bで26.1%(95%信頼区間[CI]18.4,33.7),期間Cで9.7%(95%CI 2.0,17.3)上昇した.期間Aと比較して期間Bでは広域抗菌薬使用量は-16.85(95%CI -27.49,-6.21),carbapenem系抗菌薬使用量は-15.84(95%CI -19.48,-12.21)減少した.結論:AS担当薬剤師の業務時間を確保することによって,AS介入件数が増加し,臨床医の受け入れ率の上昇,抗菌薬使用量の削減につながると考えられる.