著者
佐藤 英晶
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
no.51, pp.47-56, 2014-03-31

平成25年9月に発表された特別養護老人ホームへの入所を要介護3以上とする入所要件の変更など、介護保険制度における施設サービスの利用抑制や費用負担の見直しなどが進んでいる。高齢者人口の増大に伴う施設サービスニーズの拡大と介護保険料の高騰や社会保障給付費の増大という需給バランスをとりながら、福祉的理念を保った制度運営が求められる。しかし、一連の制度改革の方向性は、特別養護老人ホームの施設整備を抑制するなどにより、いかに介護保険給付費の増大を抑制するかという前提の下に進められている。特別養護老人ホームの入所要件の厳格化については、国が議論してきた内容そのものに大きな誤謬があることが、各種のデータ等から明らかになった。こうした財政的事情優先の制度改革は需給バランスの偏りや福祉的理念を欠き兼ねない問題を含んでいることが示唆された。
著者
佐藤 英晶
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学地域連携推進センター紀要 (ISSN:21889791)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-19, 2019-09-30 (Released:2019-12-12)
参考文献数
13

近年,成年後見制度の利用を希望する人々の増加により申立て件数が過去最高を記録している。そうした中で,親族後見による不正状況も増し,第三者後見の選任は増加してきている。そのため第三者後見を担う成年後見人等が不足してきている実態がある。特に中山間地域の郡部・過疎地において,第三者後見を担える専門職の量的確保が課題となっている。そこで国や最高裁判所は親族後見の支援に乗り出し,成年後見人等の選任の親族後見への回帰を試みている。しかし,少子高齢化や過疎化により親族後見が期待できない利用者も多く,中山間地域では親族後見に頼らない成年後見人等の選任を検討せざるを得ない。そのため,中山間地域の第三者後見の在り方を検討した結果,専門職後見を担う人材の不足する中山間地域では,法人として行う法人後見が有効であると結論付けられた。また,法人後見には様々な運営主体があり,中山間地域にあった法人後見の推進が求められるため,法人後見の運営主体やその特徴から類型化したうえで,中山間地域に適した法人後見の在り方を検討した。そこから明らかになったことは,町村社会福祉協議会による法人後見が公益性や継続性で他の法人後見に比して優位であると結論付けられた。しかし,一方で町村社会福祉協議会は現状では小規模であったり,財源的に体制を整備したり,十分な人員の配置が困難となっている。そこで,町村が中核機関や後見実施機関の設置を町村社会福祉協議会が担うことで財源や人員配置の問題を緩和でき,地域の成年後見人等の確保につながると結論付けられた。
著者
佐藤 英晶
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.45-53, 2018

2025年問題を前に一部の地域では新たな施設の建設の延期や中止など介護人材不足が現実味を帯びてきた。介護人材不足の背景には、介護人材需要の大幅な伸びと介護人材の供給が追い付かない現状がある。そこには、一般的にいわれる労働条件の問題だけではなく、法人・事業所の人材マネジメントの課題やそれに対する具体的な方策の不明瞭さが大きな要因であると推測される。また、介護職の全就労者に占める新規就業者の割合が上がらない背景には景気動向に左右されやすい点や既に採用率が全産業平均より高い状況、生産年齢人口の減少があり、大幅な伸びが期待できないことが分かった。法人・事業所での人材マネジメントの強化により離職を防止し、魅力ある職場づくりをすることが採用率の上昇につながると考えられる。また、そのためには質の高い中核的人材を増やし、介護の質を高めることが重要である。そうした人材が新規就労者のロールモデルとして機能し、更には指導・教育を担い、離職を防止する。また、労働環境の改善を促し、介護職のネガティブイメージの払拭に繋がる。結果として介護人材の確保に繋がり、介護人材の需給ギャップの解消になると結論づけられた。