著者
佐藤 宣子 佐藤 加寿子 藤村 美穂 加藤 仁美
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ズギ人工林地帯である九州をフィールドとして、高度経済成長以降、過疎化が進行している山村の持続的な社会への転換と森林、農地、景観等の資源保全に向けた地域連携の課題を明らかにするために、主に、宮崎県諸塚村と大分県上津江村においてアンケートや聞き取り調査を実施した。特に、(1)山村問題を歴史的に概観し、(2)現段階の山村を持続可能な社会へ転換するための課題を、農林経済学、社会学、環境設計論の各立場から明らかにすること、(3)持続的な山村社会形成と森林保全にとって不可欠となっている山村と都市との連携の現況と問題点について検討をおこなった。諸塚村での村民アンケート(1400部強)と小集落アンケート(72集落)によって、近年、道路の維持管理が困難となっており、山村コミュニティにとって、(1)山村社会を支える主体形成のあり方(男性壮年層中心から女性や高齢者、Iタ-ン者などが参加しやすい活動への転換)、(2)集落組織の再編方向(小集落組織合併、集落機能の見直し、村内NPOなど「選択縁」的組織と地縁組織の連携)、(3)地域連携・都市山村交流活動を推進するための山村側の課題(自治体による住民に対する説明責任、都市住民との対等な関係作り、住民の意識改革)といった3点が明らかとなった。また、都市との連携に関して、産直住宅運動、草地景観保全ボランティア、農産物産直について考察を行い、活動を通じて山村住民の意識変化と同時に都市住民との意識差異が依然として存在していることが示された。