著者
佐藤 姚子 関谷 敦 浅輪 和孝
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.353-357, 1995-07-01
被引用文献数
3

ヒラタケの菌床栽培において、培地中に添加した殺菌剤、チアベンダゾール(TBZ)の子実体による吸収について調査した。試験区は対照区のほか、それぞれの培地中に常用量(1区)、その10倍量(2区)そして50倍量(3区)のTBZを添加した。これらの培地でヒラタケを栽培し、2回にわたり発生した子実体を採取した。子実体試料のほか菌掻き時に採取した菌糸体および培地についても残留分析を行った。分析は農薬登録保留基準ハンドブック等に従い抽出、精製後、螢光検出器付きの高速液体クロマトグラフで定量した。その結果、TBZを添加した区で発生した子実体試料のすべてにおいてTBZが検出されたが、その検出値は常用量区においては、環境庁による野菜(きのこ類を含む)の農薬登録保留基準値を超えなかった。また、子実体での検出量は一次発生と二次発生とに大きな差はなかったが、柄部での検出量は傘部の2〜4倍量であった。一方、採取した子実体には2区では若干の、3区ではかなりの、柄部の短小化や傘部の変形等の品質低下と収量の減少が見られた。
著者
佐藤 姚子 浅輪 和孝
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.220-223, 1995-05-01
参考文献数
11
被引用文献数
3

シイタケの原木栽培において、ほだ木に処理した殺虫剤フェニトロチオンの子実体への吸収・残留について調査した。ほだ化したシイタケの原木を、フェニトロチオン50%乳剤希釈液に浸漬し、あるいは噴霧処理を行った。薬剤処理を行ったほだ木より発生したシイタケ子実体およびほだ木樹皮について、経時的にガスクロマトグラフィーによる残留分析を行った。その結果、薬剤処理区においては、いずれの試料からもフェニトロチオンが検出され、子実体による吸収が認められた。しかし、その検出量は薬剤処理方法により差がみられ、食品中の残留農薬に関する厚生省告示による、シイタケの基準値を試験期間中満たしたのは噴霧処理を行った区のみであった。また、ほだ木樹皮での検出値は子実体に比べ著しく高く、減衰は緩慢だった。
著者
佐藤 姚子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.213-219, 1992-10-31

畑地用除草剤、トリフルラリン(ジニトロアニリン系)の土壌細菌による分解について調べ,以下の結果を得た。1)トリフルラリン粒剤を処理した畑地圃場の土壌から,4種類の土壌細菌を分離し,これらの細菌のトリフルラリンに対する分解を調査した。その結果,T-a菌に若干の,T-b菌に顕著な分解能が認められた。無機塩の液体培地中における,この2菌の細菌によるトリフルラリンの分解を28℃の恒温槽で弱振とう培養を行って経時的に調査した(Table1)。経過日数毎にn-ヘキサンで抽出後,トリフルラリンの残存量をGCで測定した。その結果,28日後に最大の分解率,T-a菌で約20%,T-b菌で約95%を示した。2)T-b菌添加区のGC測定で,クロマトグラム上にはトリフルラリンのほか,3種の主要分解代謝物と考えられる,新しいピークがみられた(Fig.1)。それらは,トリフルラリンのRT(保持時間)が1.9分のとき、それぞれ2.5分,2.8分そして3.4分であった。それらをRT順に,代謝物1, 2, 3とし,これらの生成もトリフルラリンの検量線を用いて計算し,その経時変化をトリフルラリンの減衰とともに図示した(Fig.2)。3)上記の主要分解代謝物3種のGCおよびGC-MS測定結果は,先にジニトロアニリン系除草剤ペンディメタリンを分解する細菌(P-1, P-3, P-3菌)を用いて,トリフルラリンの分解について調査し,既に明らかにした,トリフルラリンの主要分解代謝物3種のGCおよびGC-MS測定結果と一致した。すなわち,代謝物1は,α,α,α-trifluoro-N^4,N^4^-dipropyltoluene-3,4,5-triamine,代謝物2は,α,α,α-trifluoro-5-nitor-N^4, N^4-dipropyltoluene-3,4-diamine, そして代謝物3は,2-ethyl-7-nitro-1-propyl-5-(trifluoromethyl)-benzimidazoleであった。4)GC-MS測定では,上記主要代謝物のほか,3種の新たな微量分解代謝物(4,5,6)が得られた。それらのマススペクトル,分子量,文献などから推定された構造式をFig.3に示した。代謝物4(M=263)は,α, α, α-trifluoro-5-nitro-N^4-propyltoluene-3, 4-diamineで代謝物2の脱プロピル化物であろうと推定した。代謝物5(M=269)は,3, 5-dinitro-4-(propylamino)-benzoic acid, 代謝物6(M=271)は7-amino-2-ethyl-1-propyl-5-(trifluoromethyl)benzimidazoleと推定した。5)T-a菌,T-b菌の主要な細菌学的調査を行い(Table2),それらの結果から,T-a菌はAlcaligenes属の,T-b菌はMoraxella属の細菌と推定した。