著者
西田 清一郎 佐藤 広康
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理學雜誌 = Folia pharmacologica Japonica (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.58-61, 2012-08-01
参考文献数
13

未病は,古来より東洋医学において重要なテーマとして掲げられている.未病ははっきりとした病が現れる前から体の中に潜む病態(状)を意味しており,まだ病ではない状態を意味しているのではない.未病は病を発生させる根本的な異常を意味し,東洋医学的には「〓血(おけつ)」と深いかかわりがあると考えられている.我々は,未病を現代医学的に解釈した場合,その病態は酸化ストレスの蓄積が一つの原因であると考えている.〓血に対して処方される駆〓血剤は,酸化ストレスの蓄積を抑制し,すなわち未病の進展を遅延,または阻害すると推察されている.駆〓血剤である桃核承気湯(とうかくじょうきとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)には,抗酸化作用があることが知られていた.酸化ストレスは血管緊張に変化を与えるが,これらの漢方薬は酸化ストレス負荷条件下で,血管の収縮を抑制し弛緩作用を増強した.駆〓血剤をはじめとする漢方薬は,酸化ストレスに対して,抗酸化剤として緩和作用だけではなく,状況に応じて酸化促進剤として血管収縮作用を表す.つまり,酸化ストレスをうまく制御して生体機能の調節作用をするものと考えられる.この酸化ストレス緩和作用は,酸化ストレスによる障害を和らげ,未病の進展を抑制していると思われる.
著者
西田 清一郎 佐藤 広康
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.58-61, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
13

未病は,古来より東洋医学において重要なテーマとして掲げられている.未病ははっきりとした病が現れる前から体の中に潜む病態(状)を意味しており,まだ病ではない状態を意味しているのではない.未病は病を発生させる根本的な異常を意味し,東洋医学的には「〓血(おけつ)」と深いかかわりがあると考えられている.我々は,未病を現代医学的に解釈した場合,その病態は酸化ストレスの蓄積が一つの原因であると考えている.〓血に対して処方される駆〓血剤は,酸化ストレスの蓄積を抑制し,すなわち未病の進展を遅延,または阻害すると推察されている.駆〓血剤である桃核承気湯(とうかくじょうきとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)には,抗酸化作用があることが知られていた.酸化ストレスは血管緊張に変化を与えるが,これらの漢方薬は酸化ストレス負荷条件下で,血管の収縮を抑制し弛緩作用を増強した.駆〓血剤をはじめとする漢方薬は,酸化ストレスに対して,抗酸化剤として緩和作用だけではなく,状況に応じて酸化促進剤として血管収縮作用を表す.つまり,酸化ストレスをうまく制御して生体機能の調節作用をするものと考えられる.この酸化ストレス緩和作用は,酸化ストレスによる障害を和らげ,未病の進展を抑制していると思われる.
著者
西田 清一郎 佐藤 広康
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.638-642, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は,耳鳴りを主訴に来院した70歳の男性。釣藤散の服用後,耳鳴りは,約10ヵ月で改善しそれまでにあった頭痛も改善した。しかし,釣藤散を減量後に,それまで見当たらなかった高血圧症が,みられるようになった。再度,釣藤散を通常量に戻したところ,投与開始日から,速やかに高血圧の改善を認めた。高齢者の耳鳴りを釣藤散はよく改善する可能性がある。また,本例から,釣藤散は,高血圧の程度が軽度で,深刻な合併症がない症例であれば,患者の随伴症状の治療とともに,投与でき,その降圧作用は,即時的に表れる可能性が示唆された。