著者
佐藤 征弥 瀬田 勝哉
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、イチョウが日本に伝来し、広がっていった歴史をDNA分析や木にまつわる伝説を調査することにより明らかにすることを試みた。そして日本、韓国、中国でイチョウのDNAタイプの相違点を見いだし、伝播ルートについて考察した。また巨樹の文献史料の調査により、日本と朝鮮半島におけるイチョウや他の巨樹の伝説の相違点を見つけ、その背景にある文化や歴史の違いを明らかにした。
著者
佐藤 征弥 阿部 梨沙 乃村 亜由美 姜 憲 瀬田 勝哉
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.3-19, 2012 (Released:2021-03-17)

明治時代末の天然記念物保護の機運の高まり受け,大正2 年(1913)に刊行された『大日本老樹名木誌』は,各地の著名な樹1500 本について,所在地,地上五尺の幹周囲,樹高,樹齢,伝説が記されており,日本の巨樹研究において極めて重要な資料である。また,その6 年後の大正8 年(1919)には朝鮮総督府から『朝鮮巨樹老樹名木誌』が刊行され,朝鮮半島の3168 本の樹について同様のデータが記されている。本研究は,この二つの資料を基に,記載されている樹種や樹の所有者(所在地),伝承を整理し比較した。樹種でいえば,掲載本数の多い順に『大日本老樹名木誌』ではマツ,スギ,クスノキ,ケヤキ,サクラ,イチョウと続き,『朝鮮巨樹老樹名木誌』ではケヤキ,エノキ・ムクエノキ,イチョウ,チョウセンアカマツ(アカマツのこと),ヤチダモ,エンジュと続く。樹の所有は日本では,神社や寺院に植えられている割合が高い。一方,朝鮮半島では公有地,地域共同体である「里」や「洞」が圧倒的に多い。これは,地域で樹を祭る習慣があるためである。樹にまつわる伝承をその内容に基づいて分類した結果,樹種による違いが明確に表れた。それぞれの樹種が有する形態的,生理的特徴に起因すると考えられるものも多い。また,日本と朝鮮半島を比較すると,共通点もみられるが,むしろ異なる部分が目立ち,歴史,宗教,文化の違いが反映されている。