著者
佐藤 未帆 村上 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.112, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】 わさび(山葵)は、我が国固有の香辛料である。根、茎、葉全体に辛味があり、特に根の辛みは強く、特有の高雅な風味がある。そのため、日本料理ではこれを新鮮な状態でおろして、「つま」として用いられる。また、根茎を磨砕したものは山葵餅、山葵羊羹などの菓子にも使用されている。静岡県は国内有数のわさびの産地の一つであるが、一部の地域において餅を搗く際にわさびを添加する風習がある。これは、わさびを添加することによって餅が柔らかくなり、食べやすさが向上するとともに、長期間保存できることが経験的に伝承されているためである。しかし、わさび添加による影響について詳細な記述や論文はほとんどないのが現状である。そこで、わさびの添加が餅の物理特性に及ぼす影響について検討した。【方法】 試料として、もち米はこがねもち(精白米)、わさびは静岡県産の本わさびを用いた。わさびは、使用時におろし器(鮫皮)にておろして用いた。もち米は、蒸溜水で洗浄後、20℃で5時間吸水させた。その後、30分間水切りを行い、蒸し器にて40分間強火で蒸し上げた。蒸し上がったもち米をすり鉢に移し入れ、米粒がなくなるまですりこぎで搗いた後に二等分し、一方は無添加、一方にはわさびを添加し、わさびが均一に混ざるまでさらに搗いた。また、無添加の試料についても、同回数さらに搗いた。物理特性は、調製当日の試料と1日間保存した試料について、卓上物性測定器により測定した。【結果】 調製当日の物性をみると、かたさは、わさびを添加した餅とわさび無添加の餅との間に有意差はみられなかった。一方、1日間保存した場合、わさびを添加した餅は無添加の餅と比べて、かたさが有意に低下した。