著者
佐藤 輝明 中田 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.364-371, 2008-12-01
参考文献数
35
被引用文献数
2

耕作放棄後約40年が経過し、現在は森林になっている新潟県佐渡島の中山間地にある放棄棚田において、森林の成立に関わる要因を調査した。本調査地では、コナラやクリを主とした樹木の侵入が棚田の放棄前後から始まり、その後20年くらいの間に徐々に進んでいた。放棄棚田における森林の成立には、斜面位置による地下水位と、棚田面・畦・法面といった微地形による土壌の水分環境が強く影響していた。斜面上側では地下水位が低いために土壌含水率が高くなく、棚田面・畦・法面にともに樹木が生育していた。しかし、斜面下側ほど地下水位が高いために棚田面の土壌含水率が高く、樹木は過湿な土壌環境が緩和された畦や法面におもに生育し、それらによって林冠が閉鎖されていた。法面では傾斜が土壌含水率や樹木の生育に影響を与えていた。棚田の微地形間での樹種分布の違いには、種子の散布様式や土壌の水分環境に対する生理的な耐性も関係していると考えられた。