著者
佐野 二郎
出版者
福岡県水産海洋技術センター
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-97, 2009 (Released:2011-03-05)

従来、オイカワの資源増殖事業として主に天然採捕の稚魚を用いた種苗放流が行われてきたが、近年では資源状況の悪化等により放流用種苗が入手困難となり放流数が激減し、十分な増殖が図られていない状況である。また、小規模ながら産卵場の造成が行われてきたものの、オイカワの産卵生態、特に産卵場形成要因の知見が乏しくオイカワに適した産卵場造成手法は確立しておらず、ウグイなどの他魚種の事例を参考に実施されているものであるため、効果は思ったほどあがっていなかった。本研究では、前報で報告した産卵場形成条件を元に造成に用いる底質材や造成手法の検討を行った。底質材については砂利の大きさ別にモデル産卵床を造成し、それぞれの産卵床に産み付けられた卵数と産卵床の形状変化から適正材を検討し、¢1〜2cmの砂利が材料として適していることがわかった。造成手法については、河川に直接砂利を撒いて造成を行う客土式産卵床、持ち運び可能な容器に砂利を入れて設置する移動式産卵床の2手法について検討を行った。客土式産卵床はその適正な造成時期は梅雨明け後の7月中旬であり、産卵床の周囲を石でコの字状に取り囲み砂利留めを設けることで効果を維持することできた。移動式産卵床は天然産卵場等に比べ産卵数が多い傾向が確認された。また増水や渇水などに伴う河川水位の変動に合わせて移動させる作業が必要となるものの、その回数は3〜4回と作業負担も十分対応可能な範囲であり、1基あたりの価格は285円と非常に安価であることから産卵場造成手法として有効であると判断された。
著者
佐野 二郎
出版者
福岡県水産海洋技術センター
雑誌
福岡県水産海洋技術センター研究報告 = Bulletin of Fukuoka Fisheries and Marine Technology Research Center (ISSN:09192468)
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-97, 2009-03

従来、オイカワの資源増殖事業として主に天然採捕の稚魚を用いた種苗放流が行われてきたが、近年では資源状況の悪化等により放流用種苗が入手困難となり放流数が激減し、十分な増殖が図られていない状況である。また、小規模ながら産卵場の造成が行われてきたものの、オイカワの産卵生態、特に産卵場形成要因の知見が乏しくオイカワに適した産卵場造成手法は確立しておらず、ウグイなどの他魚種の事例を参考に実施されているものであるため、効果は思ったほどあがっていなかった。本研究では、前報で報告した産卵場形成条件を元に造成に用いる底質材や造成手法の検討を行った。底質材については砂利の大きさ別にモデル産卵床を造成し、それぞれの産卵床に産み付けられた卵数と産卵床の形状変化から適正材を検討し、¢1〜2cmの砂利が材料として適していることがわかった。造成手法については、河川に直接砂利を撒いて造成を行う客土式産卵床、持ち運び可能な容器に砂利を入れて設置する移動式産卵床の2手法について検討を行った。客土式産卵床はその適正な造成時期は梅雨明け後の7月中旬であり、産卵床の周囲を石でコの字状に取り囲み砂利留めを設けることで効果を維持することできた。移動式産卵床は天然産卵場等に比べ産卵数が多い傾向が確認された。また増水や渇水などに伴う河川水位の変動に合わせて移動させる作業が必要となるものの、その回数は3〜4回と作業負担も十分対応可能な範囲であり、1基あたりの価格は285円と非常に安価であることから産卵場造成手法として有効であると判断された。
著者
佐野 二郎
出版者
福岡県水産海洋技術センター
巻号頁・発行日
no.22, pp.57-61, 2012 (Released:2013-10-08)

ハスのOpsariichthys uncirostris uncirostris(Temminck and schlegel)は,原産地である琵琶湖から他の種苗に混じって進入してきた国内移入種であり,本県の漁業権河川においてもアユやオイカワ等,水産上有用な魚種への食害影響が大きい(佐野未発表)。本研究ではこれまで判明した生態的知見を元に,ハスの効率的駆除方法について検討を行った。ハスは投網による試験の結果,産卵期中の産卵場での採捕効率が他の時期や他の場所に比べ高かった。しかし,その産卵期と産卵場環境が近縁種のオイカワと一致しており,駆除時のオイカワ混獲が大きな問題となることから,ハスのみ採捕する手法として,(1)魚類を全て魚体への影響を少なく採捕し,採捕後にハス以外は逃がす,(2)ハスのみを選択的に採捕するの2手法を検討した。(1)については定置網を用いて,(2)については3種類の異なる目合いの刺し網を用いて試験を行った。定置網については漁具の構造上やハスの生態的特徴からほとんど採捕できなかった。刺し網試験では,目合い7節(網目内径5cm)の網が他の目合いに比べオイカワの混獲が少なく,かつハスを効率的に採捕することがわかった。加えて人工河川では,オイカワ用移動式産卵床を用いた投網による選択漁獲も有効であった。このような手法を用い生息する産卵親魚の2割以上を採捕することで駆除効果が期待された。