- 著者
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小林 信吾
岡本 健佑
北口 拓也
佐野 佑樹
和中 秀行
山原 純
稲場 仁樹
小西 佑弥
岩田 晃
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0092, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに,目的】日本人工関節学会によると本邦における2015年度の人工膝関節全置換術(以下TKA)件数は約54,000件とされ,その約87%が変形性膝関節症(以下膝OA)と診断されている。肥満は膝OAの危険因子とされており,Heatherらは肥満群は非肥満群と比べTKA術後のFIM運動スコアの改善率が有意に低いことを報告しているが,体格差や肥満基準の違いといった制限があり,術後早期の筋力やROM,歩行能力と肥満との関連については明らかにされていない。本邦では森本らがTKA術前と術後4週の膝機能や歩行能力,Timed Up & Go test(以下TUG)には肥満群(BMI>25.0)と非肥満群(BMI<25.0)を比較し有意差がないことを報告しているが,単施設研究でサンプル数が少ない等の制限がある。今回,我々は多施設共同研究によって集められたデータを基に,肥満の有無がTKA術前,術後3週の膝機能や歩行能力に影響をもたらすかを調査したので報告する。【方法】多施設共同による前向き観察研究に参加した4つの施設にて,2015年6月から2016年9月までに片側のTKAを施行した60歳以上の男女153名を対象とした。術前,術後3週における術側の膝伸展筋力,膝屈曲ROM,歩行速度,TUGを計測した。筋力測定は端座位・膝屈曲60°にて等尺性膝伸展筋力を測定し最大値を体重で除した値を算出した。歩行速度は8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間を計測し速度(m/s)に変換した。TUGは椅子から起立し3m先のマークを回って帰り椅子に着座するまでに要した時間を計測した。術前のBMIが25.0未満を非肥満群,25.0以上を肥満群とし,各時期における測定値の群間比較を対応のないt検定を用いて検討し,有意水準を5%未満とした。【結果】非肥満群は63名(男性17名,女性46名,平均年齢74.9±7.1歳,身長152.1±8.2cm,体重52.3±6.7kg,BMI22.5±2.0kg/m2),肥満群は90名(男性17名,女性63名,平均年齢75.2±6.7歳,身長151.6±7.7cm,体重64.7±8.3kg,BMI28.1±2.3kg/m2)であった。以下,全項目の結果について非肥満群,肥満群の順に示す。術前の膝伸展筋力は0.26±0.1kgf/kg,0.23±0.05kgf/kg,膝屈曲ROMは125.0±15.1°,119.0±17.6°,歩行速度は1.20±0.37m/s,1.15±0.36m/s,TUGは13.0±5.4秒,12.9±4.3秒であった。術後3週の膝伸展筋力は0.17±0.06kgf/kg,0.15±0.06kgf/kg,膝屈曲ROMは119.2±11.3°,119.2±10.8°,歩行速度は1.18±0.34m/s,1.09±0.28m/s,TUGは12.4±3.9秒,12.7±3.6秒であった。群間の比較において有意差が認められた項目は術前の膝伸展筋力(p=0.03)と膝屈曲ROM(p=0.03)であり,その他の項目では有意差が認められなかった。【結論】術前の膝伸展筋力と膝屈曲ROMには肥満の有無によって有意差が認められたが,術後3週においては全ての項目で有意差は認められなかった。これらの結果から,肥満の有無はTKA術後の膝機能や歩行能力の改善には影響しないことが示唆された。