著者
佐藤 眞直 梶原 堅太郎 佐野 則道
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.83-88, 2016-09-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6
被引用文献数
8

食品の冷凍保存技術において,氷結晶による食材組織のダメージを低減するために氷組織形態を制御する技術の開発は重要である.その氷組織形態を非破壊観察する技術としてX線CT測定の応用を検討した.従来の実験室X線CT装置では,使用されている管球X線光源で十分な輝度のX線を得るために白色X線を用いる必要があることに起因して,密度差の小さい氷と食材の識別が困難である.そこで高輝度X線光源である放射光を用いることにより得られる高輝度の単色X線を活用して,X線CT像の高コントラスト化を検討した.まずこの技術検討のために,X線CT測定装置上で測定試料を凍結保持する液体窒素吹付冷凍装置を,大型放射光施設であるSPring-8において開発した.この装置を用いることにより,放射光X線CT測定技術を冷凍したマグロおよび豆腐試験片に応用し,各試験片中の3次元的な氷結晶組織を非破壊で観察することに成功した.また単色X線を用いることにより,試験片のX線CT像の画素値を,物質の密度を反映するX線の線吸収係数の分布として解析することが可能となった.これにより,得られた結果から凍結凝縮による密度の変化などの定量的な評価が可能となることも示唆された.