- 著者
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佐野 正俊
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.8, pp.57-65, 2010-08-10 (Released:2017-08-01)
本教材の物語としてのおもしろさを読んでいく、という五十嵐淳の教材研究に厚みを加えることを期して、「彼女」の物語を入れ籠とする<語り>が生成する「僕」の物語をあぶりだし、そのことによって「バースデイ・ガール」の教材価値をさらに引き出すことを試みた。これらのことは、登場人物の像の分析と総合を繰り返す「形象よみ」では行えない。なぜなら、登場人物の像を帰納法的に抽出し、登場人物が「象徴するもの」を読む「形象よみ」では、登場人物の出来事を読むことはできるが、小説の<語り>が生成する「僕」の物語を読むことはできないからである。小説の教材研究は、<語り>の仕組みに沿って行われるべきであると考える。