著者
永田 義毅 中村 由紀夫 木田 寛 佐野 譲
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.121-125, 2001-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

症例は平成5年より多系統萎縮症に罹患した54歳,女性.平成9年1月頃より食事性低血圧を認めるようになった.一日の血圧最高値,血圧最低値はそれぞれ232/146mmHg,72/46mmHgであった.本例において食事が自律神経に及ぼす影響をホルター心電図を用いた心拍変動解析にて検討した.副交感神経機能,交感神経機能の指標としてHF,LF/HFを用いた.健常者では食事によりLF/HFは上昇し,交感神経活動の賦活化がみられた.本例では血圧が188/119mmHgから105/40mmHgへと低下したが,LF/HF,血漿ノルアドレナリン値は不変であった.食事性低血圧の機序の一つとして,食事による腹部内臓血流増加に対する交感神経系を介した血流再分布障害の関与が推測されている.本例の心拍変動解析の結果も,それを示唆するものと思われた.