- 著者
-
保崎 輝夫
武山 治雄
- 出版者
- 日本矯正歯科学会
- 雑誌
- 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.4, pp.234-245, 1995-08
- 参考文献数
- 37
- 被引用文献数
-
10
亜鉛は生体にとっての必須金属であるが, その欠乏が下顎頭軟骨に及ぼす影響はほとんど知られていない.そこで, 実験的に亜鉛欠乏食を投与したラットで下顎頭軟骨における成長発育, 軟骨基質の初期石灰化への影響と, 実験的な歯の移動を行った場合にどのような変化が生じるのかを光学顕微鏡および電子顕微鏡的に観察した.その結果, 以下の知見を得た.1. 下顎頭軟骨の幅, とくに肥大層が減少し, 菲薄化していた.2. 軟骨基質の初期石灰化は著しく阻害されていた.3. 骨髄側の骨基質の石灰化状態は, 粗なものになっていた.4. 石灰化に関与すると考えられる, 炭酸脱水酵素の活性は著しく減少していた.5. 実験的な歯の移動を行った場合, 歯槽骨に著しい穿下性骨吸収が生じていた.以上の結果から, 亜鉛の欠乏は種々の障害を引き起こすことが明らかとなった.したがって, 食餌中の亜鉛は非常に重要な成分であることが示唆された.