著者
高野 安紀子 鬼久保 平 会田 泰明 清村 多 山口 賢 林 弘明 武山 治雄 清村 寛
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.353-359, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
14

明海大学病院(旧城西歯科大学病院)矯正歯科において, 1989年8月から1995年8月にかけて来院した患者について統計学的分類を行い, 本院における以前の調査報告と比較し以下の結果を得た.1. 年度別新来患者数では, 大きな変動はみられず, 年間平均307.8人が来院していた.2. 初診月分類では, 7月, 8月の夏休みの時期に26.0%が, 3月, 4月の春休み前後の時期に20.9%が来院していた.3. 性別分類では, 男性 : 女性が1 : 1.8と女性患者が多かった.4. 年齢別分類では, 7∿12歳の患者で61.0%を占めていた.また, 成人患者が2割を超えて増加(26.7%)し, 特に女性の成人患者が増え, 女性患者全体の32.5%で, 成人男女比は1 : 2.5であった.5. 居住地域別分類では, 近隣の市町村からの来院が多く, そのほとんどは当院を中心として半径20km以内で, 全体の77.0%を占めていた.6. 主訴別分類では, 乱杭歯が最も多く, 次いで受け口, 出っ歯, 噛み合わせが悪い, その他, 歯が生えない, 検診で言われた, 顎が痛いの順であった.その他の項目も多く, 患者の訴えの多様化が示された.7. 現在の歯並びに気付いた時期としては, 「乳歯が抜けて生え変わるとき」が圧倒的に多く, 「全部永久歯にはえかわってから」, 「だんだん悪くなりました」, 「乳歯の時」, 「他人から言われて気が付きました」, 「急に悪くなりました」の順であった.8. Hellman's developmental stage分類ではIVA, IIIBが多く次いでIIIC, IIIA, IVC, VA, IIC, IIA, Iの順であった.9. 初診時に保険が適用となった患者数は, 全体の6.5%であった.10. 1998年4月現在の治療経過では, 保定終了, 保定観察中, 動的治療中がほぼ同率で, 次に中断, 経過観察中, 転医の順であった.
著者
保崎 輝夫 武山 治雄
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.234-245, 1995-08
参考文献数
37
被引用文献数
10

亜鉛は生体にとっての必須金属であるが, その欠乏が下顎頭軟骨に及ぼす影響はほとんど知られていない.そこで, 実験的に亜鉛欠乏食を投与したラットで下顎頭軟骨における成長発育, 軟骨基質の初期石灰化への影響と, 実験的な歯の移動を行った場合にどのような変化が生じるのかを光学顕微鏡および電子顕微鏡的に観察した.その結果, 以下の知見を得た.1. 下顎頭軟骨の幅, とくに肥大層が減少し, 菲薄化していた.2. 軟骨基質の初期石灰化は著しく阻害されていた.3. 骨髄側の骨基質の石灰化状態は, 粗なものになっていた.4. 石灰化に関与すると考えられる, 炭酸脱水酵素の活性は著しく減少していた.5. 実験的な歯の移動を行った場合, 歯槽骨に著しい穿下性骨吸収が生じていた.以上の結果から, 亜鉛の欠乏は種々の障害を引き起こすことが明らかとなった.したがって, 食餌中の亜鉛は非常に重要な成分であることが示唆された.