著者
保田 晋助
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2621-2630, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1

抗リン脂質抗体症候群は,リン脂質結合蛋白に対する自己抗体を有し,動静脈および微小血管における血栓症や流死産,重症妊娠高血圧症や胎盤機能不全による早産などの妊娠合併症をひきおこす自己免疫疾患である.抗リン脂質抗体は免疫学的手法と凝固学的検査を組み合わせて検出するが,手法が標準化されていないなど問題点が残る.治療の主眼は血栓症の再発予防であり抗血小板療法や抗凝固治療が行われるが再発が依然として高頻度である.習慣流産患者に対してはヘパリン・少量アスピリンの併用が行われる.新たな予後予測や治療の試みがなされつつある.
著者
保田 晋助
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.373-378, 2004 (Released:2005-02-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome ; APS)は,抗リン脂質抗体(Antiphospholipid antibodies ; aPL)が検出され,動静脈血栓症または妊娠合併症を生ずる疾患である.aPL の対応抗原として,β2-グリコプロテインI(β2-GPI)やプロトロンビンが挙げられ,特に抗β2-GPI抗体は病原性を有する自己抗体として研究されてきた.抗β2-GPI抗体が血栓症を引き起こす機序としては,1)自己抗体の存在によりβ2-GPIの陰性荷電リン脂質への結合性が高まり,β2-GPIのもつプロテインCに対する抑制作用が強調されること,2)β2-GPI-LDL複合体の内皮下マクロファージによる取り込みを促進し,動脈硬化を進展させること,3)血小板のApo-Eレセプターへの結合を介して血小板の粘着能を上昇させること4)内皮細胞や単球表面に結合し,p38 MAPキナーゼの系を介して組織因子を発現,局所を過凝固に導くことなどが報告されている.また,習慣流産の機序としては,胎盤梗塞のみならず補体系の活性化が報告された.これらの病態の解明が,新しい治療に繋がることが期待される.