著者
俣野 美咲
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.129-137, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
24

本稿の目的は,青少年層におけるパートナーとの避妊に関するコミュニケーションが実際の避妊行動に及ぼす影響について検証することにある.従来,青少年の避妊行動に関しては,本人が正しい知識を身につけているかどうかと避妊の実行の関連が重要視されてきた.しかし,避妊の実行は個人の意思のみで決定されるものではなく,パートナーとの交渉に基づき決定されるものである.したがって,一方の要因に注目するだけでは不十分であり,パートナーとの間で避妊の実行について十分に意思疎通が図れているかという点にも注目する必要がある.そこで本稿では,「青少年の性行動全国調査」の第7回調査(2011年)データを用いて,高校生・大学生男女において,パートナーとのコミュニケーションの円滑さと頻度が避妊の徹底にどのような影響を及ぼすかについて分析をおこなった.その結果,男子ではパートナーとのコミュニケーションの円滑さと頻度は避妊行動に影響を及ぼさない一方で,女子では避妊に関するコミュニケーションの頻度が高いほど避妊を徹底している確率が高いことが示された.今後,青少年の適切な避妊の実行を周知・徹底していくためには,正確な知識の伝達に加えて,パートナーとの間で避妊についての十分な意思疎通を図ることの重要性を教授するなどの包括的な性教育が求められるだろう.
著者
俣野 美咲
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.171-191, 2018-12-28 (Released:2021-11-24)
参考文献数
30

本稿の目的は、若年期における親への経済的援助に対する出身階層の影響について明らかにすることである。近年、親に対する経済的援助を行う者が増加しており、二〇代や三〇代の比較的若い層においても、四〇代以上の中年層と同程度に親への経済的援助を行っている。近年の若年非正規雇用の拡大などをふまえると、自身の人生の基盤を確立する時期である若年期に、親を経済的に支援しなければならないことの負担はより一層大きくなっていると考えられる。そこで本稿では、先行研究では十分に検証されてこなかった出身階層の影響に着目し、「全国家族調査(NFRJ)」のデータを用いて、若年期の親への経済的援助について分析を行った。その結果、父親が高学歴である者は、若年期に、親に対して一方的に経済的な援助を行う状態になりにくいことが示された。つまり、生まれ落ちた家庭が高い階層的地位にある場合、本人も高い社会経済的地位を獲得しやすく、親も経済的に安定しているため親の生活費の援助などを負担しなければならない状況にはなりにくい。その一方で、出身階層が低いと、自身が高い社会経済的地位を達成することのハードルは高くなり、労働市場において不利な立場に陥りやすいうえ、親に対して一方的に経済的な援助をしなければならない確率も高くなる。このように、ライフコースのさまざまな側面で出身階層による不利が集積し、挽回が困難となっていることがうかがえる。