- 著者
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伊藤 綾香
- 出版者
- 東北社会学会
- 雑誌
- 社会学年報 (ISSN:02873133)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, pp.51-61, 2016-12-26 (Released:2018-09-25)
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
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本稿では,コミューンという起源を持つ「わっぱの会」において,対抗文化的手法がいかに変遷し,それが現在の活動にどのような特質を生み出しているのかを明らかにする. 「わっぱの会」は,障害者入所施設でボランティアを行なった学生が,産業社会化に伴い施設化を進める支配的文化への対抗文化として,街の中でのコミューン建設に着手したことに始まる.そこで経済的問題に直面し,社会福祉法人格の取得という制度化を選ぶが,外面的にそれを受け入れながらも,実際には共同生活での「一つの財布」をもとにした給与体系をつくるなど,独自のありようを模索した.現在の働く場のメンバーは,大小問わず生じるトラブルや衝突を通して「自問自答」しながらより良い働き方を模索し,障害者と「一緒に働く」べきという価値規範を身につけていた.これは必ずしも障害者をめぐる社会的状況に関心のなかったメンバーにも見られた.外面的な制度化の受け入れと独自のあり方の模索は,運動にとっての制度化のジレンマを乗り越えようとする工夫である.「閉じられた」コミューンから「開かれた」働く場への活動様式の移行は,活動に関心の無い人々を受け入れるだけでなく,彼らを,より良い働き方の追求という,変革志向的な活動の担い手として再生産することを可能にしている.こうした,独自の制度の確立という方法での対抗文化の維持は,運動が運動として継続するうえで有用である.