著者
新田 收 俵 紀行 妹尾 淳史 来間 弘展 古川 順光 中俣 修
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A1269, 2007
被引用文献数
2

【目的】腰痛を予防する方法として姿勢の改善が重要とされ,近年体幹深部の筋が姿勢保持に重要な役割を果たしているとする研究成果が多く報告されている.これらの報告で姿勢の保持に重要な役割を果たす筋として大腰筋が取り上げられている.現在様々な大腰筋強化トレーニング方法が提案されている.しかし体幹深部筋活動評価を体表面から行なうことは困難であるために,どのようなトレーニングが有効であるかの実証がなされてない.本研究では不安定板を用いたトレーニング方法を採用し,トレーニング前後のMR(MAGNETIC RESONANCE信号の変化を指標として,大腰筋に対するトレーニングの影響を検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】対象者は腰痛等既往のない男性14名,女性3名,平均年齢20.9歳(20-22)とした.本研究は首都大学東京倫理審査委員会の承認を得て行った.分析対象とした筋は大腰筋とし,対照として表在筋である腹直筋と脊柱起立筋を取り上げた.トレーニングは背臥位にて骨盤下に直径320mmの不安定板(専用器具)を置き,骨盤の肢位を保持したまま下肢を左右交互に各20秒,約20mm挙上する動作を20分行うこととした.なお股関節・膝関節は30度程度屈曲位とした.使用装置は1.5T Magnetom Symphony(SIEMENS社製)で,撮像法はTrue FISP(TR=4.30ms,TE=2.15ms,NEX=1,FA=50°,Scan Time=10sec,FOV=400mm)を用いた.なお分析部位は第4腰椎位としSlice厚=10mm,gap=2mmとした.専用器具は全て非磁性体であり,信号変化のみで筋の活動様相を評価するため,被検者と専用器具とをMR装置内に配置させた状態で実験の全てを施行した.信号強度の計測は画像分析ソフトウエアー(OSIRIS)を用いた.分析は左右の大腰筋,腹直筋,脊柱起立筋内に関心領域(ROI)を設定し,ROI内の信号強度平均値をMR信号とした.統計処理はトレーニング前後の平均MR信号を,対応のあるt検定にて比較した.有意水準は5%とした.<BR><BR>【結果】トレーニング前後のMR信号は,前平均111.1(SD13.6),後平均119.0(SD16.4)であり有意差が認められた.これに対して腹直筋では前平均291.7(SD64.9),後平均281.5(SD58.2),脊柱起立筋では前平均98.7(SD11.6),後平均94.5(SD11.2)であり差はなかった.<BR><BR>【考察】今回の撮影条件では比較的撮影時間が短いため腹部など動きの抑制が困難な部位の撮影に適している.また画像はT2*強調となり水分が白く強信号となる.このことから信号が強く変化することは筋活動直後の変化を示すとされている.今回の結果から本トレーニングにより大腰筋が選択的に活動することが示唆された.<BR>