著者
神尾 博代 中俣 修 古川 順光 信太 奈美 来間 弘展 金子 誠喜 柳澤 健
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1243, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】転倒の危険が少なく、より安定した立ち上がり動作を獲得することは重要である。片麻痺患者の場合、麻痺側を前方に位置した立ち上がり動作を日常生活活動として指導することが多い。そこで、足部位置を変化させることによって、その動作を遂行するためにどの程度の下肢関節モーメントが必要とされるのか把握することが必要であると考えられる。本研究では、足部を平行位にした場合と前後に置いた場合の立ち上がり動作を比較し、下肢関節モーメントについて分析することを目的にした。【方法】対象は健常成人11名(男性7名、女性4名)とした。ヘルシンキ宣言に基づいて、被験者に実験の目的・危険性等を説明し書面にて承諾を得た。立ち上がり動作の計測には、三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)および床反力計(kistler社製)を用いた。背もたれのない座面高を下腿長の高さとする、椅子からの立ち上がり動作を課題とした。このとき、上肢は体側に自然下垂位とし、スピードは被験者の最も楽に立ち上がれる速さとした。また、足部位置は肩幅の広さとし、一側足部を前方に置いた右前型、左前型、平行位に置いた揃え型の3種類とした。各試行とも3回ずつ行った。この時の下肢の股関節・膝関節の伸展モーメントの最大値をもとめ、各試行間での比較検討を行った。統計解析は分散分析および多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。【結果および考察】揃え型、右前型、左前型における股関節・膝関節の最大伸展モーメントの平均値(SD)は、左股関節では揃え型が74.5(16.0)Nm、右前型が107.7(22.7)Nm、左前型が79.9(29.5)Nmであった。右股関節では揃え型が69.1(17.7)Nm、右前型が77.3(25.8)Nm、左前型が93.6(20.1)Nmであった。左膝関節では、揃え型が57.1(11.9)Nm、右前型が83.4(15.6)Nm、左前型が7.7(8.0)Nmであった。右膝関節では揃え型が63.1(18.0)Nm、右前型が11.1(10.1)Nm、左前型が91.8(22.6)Nmであった。一側下肢を前方に出すことで前方側の膝関節モ-メントは有意に小さくなった。しかし、前方側の股関節伸展モーメントは揃え型と比べてほとんど変化が見られず、後方側の股関節・膝関節モーメントは揃え型よりも有意に大きなモーメントを必要とすることがわかった。臨床場面で、麻痺側下肢を前方に出した位置での立ち上がり動作を指導する場面があるが、これらの結果から非麻痺側である後方側の股関節・膝関節伸展モーメントが十分に発揮できないと立ち上がることが困難になると考えられる。今後、片麻痺患者について検討することで確認を行いたいと考える。なお、本研究は本学の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
著者
神尾 博代 山口 三国 信太 奈美 古川 順光 来間 弘展 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Eb1258, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 生活習慣病発症予防に効果があるとされる身体活動量は、1日当たりおよそ8,000~10,000歩に相当すると考えられている。しかし、ライフスタイルの変化や交通手段の進歩により、日本人の1日の歩数は男性、女性とも目標値に達するどころか、1日平均歩数は減少している。身体活動量の点から見るとパラメータとして歩数を増大させるだけではなく、歩容を変化させる方法もある。そこで、本研究では歩容調整によって、体重、体脂肪率、BMIを減少させることができるかについて検討することを目的とした。【方法】 健常若年女性24名を対象とし、ランダムに運動・ウォーキング実施群(Ex群)と対照群(C群)の2群に12名ずつ割り付けた。Ex群には日常生活の中で気軽に行える簡単な体操と歩容調整の指導をし、日常生活内で実施させた。体操の内容は1.立位での股関節の伸展、2.立位での重心の前方移動、3.背伸び、4.立位での前方リーチの4種類とした(山口式エクササイズに準拠)。また、歩行指導時の注意点は1.けり出し時、骨盤を後方回旋させず、股関節・膝関節をしっかりと伸展させる。2.けり出し時、踵が外側を向いたり内側を向いたりしないように真っ直ぐに蹴る。3.背すじを丸めたり、反りすぎたりしないようにするとした(山口式スタイルアップウォークに準拠)。C群には指導をせず、通常通りの日常生活を指示した。また、両群に生活習慣記録機(スズケン社製KenzライフコーダPLUS)を腰部に装着させ、起床時から入浴時を除く就寝まで、2週間継続して計測した。指導実施前と2週間経過後の身長・体重・BMI・体脂肪率を測定し、各項目の介入前後の差を求めた。また、2週間の歩数・総消費量・強度別の活動時間を計測した。ライフコーダの強度1~3を低強度(3METs以下)、強度4~6を中等強度(3~6METs)、強度7~9を高強度(6METs以上)とし、それぞれの1日の平均活動時間をもとめた。各項目は有意水準5%にて両群の平均値の差の検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対し実験の目的・方法・予想される結果・期待される利益・不利益・危険性・中途離脱の権利等について十分な説明を行い、実験参加の承諾書にて同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 1日の平均歩数(S.D.)は、Ex群が8598.2(1303.5)歩、C群は9146.9(2750.8)歩であり、歩数に有意差は無かった。しかし、Ex群の介入前後の体重およびBMIの差の平均(S.D.)は体重差-0.7(0.7)kg、BMI差-0.3(0.3)であり、C群の-0.1(0.6)kg、0.0(0.2)に比べて有意に減少していた(p<0.05)。また、体脂肪率の差の平均(S.D.)はEx群-1.7(1.0)%、C群は-0.8(1.3)%と減少傾向が見られた。また、2群間の3つの強度の1日当たりの平均活動時間(S.D.)はEx群が低強度54.8(11.1)分/日、中等強度29.0(7.6)分/日、高強度2.4(1.8)分/日、C群が低強度57.8(15.7)分/日、中等強度30.9(12.5分/日)、高強度3.6(2.1)分/日となり、有意差はみられなかった。総消費量の平均値もEx群1774.3(129.9)kcal、C群1847.6(209.9)Kcalと有意差がなかった。【考察】 Ex群とC群では、歩数や活動レベルを示す運動強度などの量的側面に関して、有意な差がみられなかった。しかし、Ex群でエクササイズ後の体重、BMIが有意に減少していることから、歩容調整により歩行に質的変化が生じ、歩行に使用していた筋活動に違いが生じたのではないかと考えられた。通常、生活動作としての歩行は、移動目的だけを満たす動作となることが多い。しかし、意図的に歩容としての身体の振る舞いを意識することで、歩行に参加する筋活動の増加が得られたものと考えられた。歩行は移動の手段であって、通常速度では運動としての負荷は低くなるが、歩容を意識変容させることで、筋活動の参加が増し、負荷運動として用いることができたのではないかと考えられた。今まで、生活習慣病の予防について歩数やスピードに着目されがちであったが、歩行そのものの質も重要であることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 歩行を指導する際に、無理なくより効果的に生活習慣病の予防として歩行を活用していくために、量や運動強度だけではなく、歩行の質についての重要性が明らかになった。
著者
中俣 修 古川 順光 細田 昌孝 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0149, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】2関節筋であるハムストリングスは、股・膝関節角度の組み合わせにより下肢運動を制約する。この筋の柔軟性と動作との関係については立位体前屈動作に関する報告が多く、歩行との関係は明らかではない。歩行時の遊脚相後期は股関節屈曲・膝関節伸展運動の組み合わせの運動が生じるため、柔軟性低下は下肢運動を制約すると考えられる。そこで、本研究ではハムストリングスの柔軟性と歩容との関係について、歩幅および骨盤に対する遊脚側下肢の運動角との関係の検討を目的とした。【方法】本研究の実施にあたり本学研究倫理審査委員会の承認を受けた。対象は本研究に対して同意を得た健常男性15名(平均年齢21.5歳、平均身長171.3cm、平均体重63.4kg)であった。ハムストリングスの柔軟性は、背臥位膝関節伸展位での他動的股関節屈曲角度(SLR角)を指標とし、ゴニオメーターにて5°単位で測定した。被験者の体表上の骨指標部に反射マーカーを貼付後、トレッドミルAR-200(ミナト医科学)上を1)60 m/分、2)80 m/分、3)100 m/分、4)120m/分にて2分間歩行した。歩行開始1分目から30秒間を三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)にて計測し、10歩行周期分のデータを分析に用いた。分析には、右下肢のSLR角、右歩幅(身長により正規化した左右外果間の最大距離の矢状面への投影距離)、骨盤に対する股・膝関節の関節角度により決定される下肢全体の運動角度の指標として右歩幅算出時点での右下肢の下肢屈曲角(上前腸骨棘と第2仙椎棘突起を結ぶ線分と大転子と外果を結ぶ線分のなす角度の矢状面への投影角の歩行時と立位姿勢との差分)を用いた。SLR角度と各歩行速度における歩幅および下肢屈曲角度との相関の分析にはピアソンの相関係数を用い、危険率5%未満を有意とした。【結果】右SLR角度(平均値)は70.3°であった。右歩幅(平均値)は、1)30.5% 、2)35.1% 、3)39.6%、4)42.4% 、下肢屈曲角(平均値)は、1)18.1°、2)20.4°、3)23.3°、4)24.9°と歩行速度の増加に伴い増加した。SLR角と歩幅および下肢屈曲角には全ての歩行速度において有意な相関を認めなかった。【考察】今回の結果から、歩幅および下肢屈曲角はハムストリングスの柔軟性に関連せず、歩行速度に応じて一定範囲の変化で調整されるものと考える。今回、股・膝関節の影響の総和として下肢屈曲角度を指標としたため、各関節運動への影響について、さらに詳細な検討が必要である。【まとめ】ハムストリングスの柔軟性と歩行時の歩幅、遊脚相後期の骨盤に対する下肢全体の運動角には関連を認めなかった。
著者
松尾 達彦 新田 收 信太 奈美 古川 順光
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>心拍数調節は,交感神経と副交感神経の二重支配を受け,運動強度に比例して増加する。しかし,心臓への交感神経支配に障害のある頸髄損傷患者は心拍数の上限が低いことが知られている。そこで,激しい運動量が求められる車椅子スポーツにおいて,脊髄の損傷レベルによる心拍数変化の違いを明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>1.対象</p><p></p><p>対象は,車椅子ラグビー選手9名(頸髄損傷,以下頸髄群),車椅子バスケットボール選手14名(胸腰髄損傷,以下胸腰髄群)とした。男性のみで,頸髄群の平均年齢(SD)[歳]は26.3(3.8)歳,胸腰髄群は26.4(4.0)歳だった。</p><p></p><p>2.方法</p><p></p><p>心拍センサーPolar Team Pro(ポラール・エレクトロ・ジャパン株式会社)を装着させ,体育館内で平均約4時間,試合形式の練習をさせ,1秒毎の心拍数(SD)[回/分]を測定した。安静時1分間の心拍数の平均値を安静時心拍数,練習中で最も高い心拍数を最大心拍数とした。</p><p></p><p>統計解析は,最大心拍数を従属変数,頸髄群・胸腰髄群の2群を対応の無い要因,安静時・練習中を対応のある要因とし,二元配置分散分析およびBonferroni法による単純主効果の検定を行った。解析はIBMSPSSver22を用いた。有意水準を5%とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>I.分散分析結果</p><p></p><p>群間比較では,安静時心拍数と最大心拍数は,どちらも頸髄群が有意に低値を示した。前後比較では,頸髄群と胸腰髄群は,どちらも練習中に有意に高値を示した。さらに交互作用が有意であり,練習による心拍数変化が,頸髄群,胸腰髄群で有意に異なることが示された。</p><p></p><p>II.単純主効果の検定</p><p></p><p>単純主効果においては,安静時・練習中,および頸髄群・胸腰髄群の全ての組み合わせにおいて有意差が示された。頸髄群の安静時心拍数の平均値は78.78(10.23)回/分,胸腰髄群は89.43(6.82)回/分であった。頸髄群の最大心拍数の平均値は141.00(19.22)回/分,胸腰髄群は181.36(7.15)回/分であった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>最大心拍数は,頸髄群が有意に低値を示した。心拍数は,Th1-Th4の高さにある交感神経の興奮によって増加するが,頸髄群は中枢から心臓への神経が頸髄で障害されている。しかし,副交感神経による抑制を解くことで,心拍数が120回/分前後まで増加することが報告されている。そのため,頸髄群は胸腰髄群より低値だが,競技中に心拍数を増加させることができたと考えた。</p><p></p><p>一方,安静時心拍数も頸髄群が低値を示した。これは,残存している筋の差により頸髄群の方が必要なエネルギーが少なくて済むのではないかと考えた。また,神経性調節による心拍数コントロールに限界がある頸髄群は,液性調節による心拍数コントロールを優先している可能性があると考えた。</p>
著者
中俣 修 山﨑 敦 古川 順光 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O2034, 2010

【目的】体幹部は身体重量の約50%を占める大きな身体領域である。そのため、体幹筋には、体幹の姿勢の平衡状態を維持するために外力に応じて筋出力を調整する機能が求められる。立位では、体幹部の重心線が腰椎のすぐ近位を通過するため、姿勢保持に作用する体幹筋活動が小さい。しかし、変化は少ないながら腹横筋、内腹斜筋には、背臥位から立位への姿勢変換に伴い筋活動の増加を認め、この活動は内臓器の支持、仙腸関節の安定性に関与するとされる。立位における体幹筋活動、鉛直方向の運動負荷に対する体幹筋活動の特徴を明らかにすることは、重力に抗する姿勢保持メカニズムを考える上で重要であると考えられるが、鉛直方向の運動負荷と体幹筋の活動との関係を分析した報告は少ない。そこで、本研究では、跳躍動作により体幹部への鉛直方向の運動負荷を加えた際の腹筋群の筋活動に注目し、鉛直方向の運動負荷に対する腹筋群の活動の特徴を分析することを目的とした。<BR>【方法】対象は健常な大学生男性8名(平均年齢21.6歳、平均身長172.7cm、平均体重61.9kg)であった。体幹筋群の筋電位の計測にテレメーターシステムWEB-5000(日本光電社製)、腰部および膝関節の運動の計測に電気角度計(Biometrics社製)、動作中の加速度の計測には3軸加速度計(MicroStone社製)を用いた。体幹右側の腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、脊柱起立筋(胸部)、多裂筋(腰部)を被験筋とした。座位にて腹筋群および背筋群の最大等尺性筋収縮(MVC)時の筋電図信号の計測を行った後、腰部および膝関節部に電気角度計、胸骨前面に3軸加速度計を取り付けた。課題動作は跳躍動作とした。被験者には両手を胸の前方で組ませ、体幹部を直立に維持した状態で縄跳びを跳ぶ程度の跳躍動作を15~20回程度反復させた。計測した筋電位・関節角度・加速度の信号をA-D変換器 (AD instruments社製)を介してコンピュータに取り込んだ。体幹の加速度変化および膝関節運動の特徴から跳躍動作の周期(跳躍周期)を決定し、連続した3回の動作を任意に抽出した。跳躍周期における各筋の積分筋電図値を算出した後に跳躍周期の時間で除し、単位時間あたりの積分筋電図値(跳躍動作積分筋電図値)を算出した。さらに跳躍動作積分筋電図値を、MVC実施時の単位時間あたりの積分筋電図値を用いて正規化し、跳躍動作積分筋電図値(%MVC)を算出した。3周期の平均値を分析に用いた。跳躍動作における腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の跳躍動作積分筋電図値の相違の分析には、Kruskal-Wallis検定を用い、有意差を認めた場合にはBonferroniの不等式による修正を利用し多重比較を行なった。<BR>【説明と同意】研究への参加にあたり、被験者には書面および口頭にて十分な説明を行った後、実験参加の同意を得て実施した。<BR>【結果】跳躍動作積分筋電図値(%MVC)の平均値(標準偏差)は、腹直筋:3.5(1.9)%、外腹斜筋:9.4(5.4)%、内腹斜筋:28.9(9.5)%であった。筋間の筋活動量には有意差を認め(P=.025)、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の組み合わせ全てに有意差を認めた(P<.01)。<BR>【考察】跳躍動作周期における筋活動量の分析結果から、腹直筋の筋活動が小さく、内腹斜筋の筋活動が大きい特徴を認めた。この特徴は、ドロップジャンプについて分析を行なった河端らの研究結果とも類似したものであった。今回、計測を行った内腹斜筋部位は、骨盤内を横行するため直接的な脊柱運動への関与はなく、主として骨盤部の安定性、内臓器の支持に関与するとされる。跳躍動作では立位と比較し体幹部にはより大きな圧迫負荷が加わること、内臓器に作用する慣性力が作用する。そのため内腹斜筋部に大きな筋活動を生じたと考えられる。今回の結果より、鉛直方向の運動においては、腹筋群の役割は異なり、腹直筋よりも側腹筋、特に内腹斜筋の役割が大きく関与すると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究では跳躍動作時の体幹筋活動を分析することにより、鉛直方向への運動刺激に対する腹筋群の活動の特徴を検討した。立位姿勢を保持するメカニズムの検討、立位姿勢の指導や荷重位での体幹筋トレーニングを検討する視点として意義が大きいと考えられる。<BR>
著者
神尾 博代 山口 三国 信太 奈美 古川 順光 来間 弘展 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1258, 2012

【はじめに、目的】 生活習慣病発症予防に効果があるとされる身体活動量は、1日当たりおよそ8,000~10,000歩に相当すると考えられている。しかし、ライフスタイルの変化や交通手段の進歩により、日本人の1日の歩数は男性、女性とも目標値に達するどころか、1日平均歩数は減少している。身体活動量の点から見るとパラメータとして歩数を増大させるだけではなく、歩容を変化させる方法もある。そこで、本研究では歩容調整によって、体重、体脂肪率、BMIを減少させることができるかについて検討することを目的とした。【方法】 健常若年女性24名を対象とし、ランダムに運動・ウォーキング実施群(Ex群)と対照群(C群)の2群に12名ずつ割り付けた。Ex群には日常生活の中で気軽に行える簡単な体操と歩容調整の指導をし、日常生活内で実施させた。体操の内容は1.立位での股関節の伸展、2.立位での重心の前方移動、3.背伸び、4.立位での前方リーチの4種類とした(山口式エクササイズに準拠)。また、歩行指導時の注意点は1.けり出し時、骨盤を後方回旋させず、股関節・膝関節をしっかりと伸展させる。2.けり出し時、踵が外側を向いたり内側を向いたりしないように真っ直ぐに蹴る。3.背すじを丸めたり、反りすぎたりしないようにするとした(山口式スタイルアップウォークに準拠)。C群には指導をせず、通常通りの日常生活を指示した。また、両群に生活習慣記録機(スズケン社製KenzライフコーダPLUS)を腰部に装着させ、起床時から入浴時を除く就寝まで、2週間継続して計測した。指導実施前と2週間経過後の身長・体重・BMI・体脂肪率を測定し、各項目の介入前後の差を求めた。また、2週間の歩数・総消費量・強度別の活動時間を計測した。ライフコーダの強度1~3を低強度(3METs以下)、強度4~6を中等強度(3~6METs)、強度7~9を高強度(6METs以上)とし、それぞれの1日の平均活動時間をもとめた。各項目は有意水準5%にて両群の平均値の差の検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対し実験の目的・方法・予想される結果・期待される利益・不利益・危険性・中途離脱の権利等について十分な説明を行い、実験参加の承諾書にて同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 1日の平均歩数(S.D.)は、Ex群が8598.2(1303.5)歩、C群は9146.9(2750.8)歩であり、歩数に有意差は無かった。しかし、Ex群の介入前後の体重およびBMIの差の平均(S.D.)は体重差-0.7(0.7)kg、BMI差-0.3(0.3)であり、C群の-0.1(0.6)kg、0.0(0.2)に比べて有意に減少していた(p<0.05)。また、体脂肪率の差の平均(S.D.)はEx群-1.7(1.0)%、C群は-0.8(1.3)%と減少傾向が見られた。また、2群間の3つの強度の1日当たりの平均活動時間(S.D.)はEx群が低強度54.8(11.1)分/日、中等強度29.0(7.6)分/日、高強度2.4(1.8)分/日、C群が低強度57.8(15.7)分/日、中等強度30.9(12.5分/日)、高強度3.6(2.1)分/日となり、有意差はみられなかった。総消費量の平均値もEx群1774.3(129.9)kcal、C群1847.6(209.9)Kcalと有意差がなかった。【考察】 Ex群とC群では、歩数や活動レベルを示す運動強度などの量的側面に関して、有意な差がみられなかった。しかし、Ex群でエクササイズ後の体重、BMIが有意に減少していることから、歩容調整により歩行に質的変化が生じ、歩行に使用していた筋活動に違いが生じたのではないかと考えられた。通常、生活動作としての歩行は、移動目的だけを満たす動作となることが多い。しかし、意図的に歩容としての身体の振る舞いを意識することで、歩行に参加する筋活動の増加が得られたものと考えられた。歩行は移動の手段であって、通常速度では運動としての負荷は低くなるが、歩容を意識変容させることで、筋活動の参加が増し、負荷運動として用いることができたのではないかと考えられた。今まで、生活習慣病の予防について歩数やスピードに着目されがちであったが、歩行そのものの質も重要であることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 歩行を指導する際に、無理なくより効果的に生活習慣病の予防として歩行を活用していくために、量や運動強度だけではなく、歩行の質についての重要性が明らかになった。
著者
新田 收 俵 紀行 妹尾 淳史 来間 弘展 古川 順光 中俣 修
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A1269, 2007
被引用文献数
2

【目的】腰痛を予防する方法として姿勢の改善が重要とされ,近年体幹深部の筋が姿勢保持に重要な役割を果たしているとする研究成果が多く報告されている.これらの報告で姿勢の保持に重要な役割を果たす筋として大腰筋が取り上げられている.現在様々な大腰筋強化トレーニング方法が提案されている.しかし体幹深部筋活動評価を体表面から行なうことは困難であるために,どのようなトレーニングが有効であるかの実証がなされてない.本研究では不安定板を用いたトレーニング方法を採用し,トレーニング前後のMR(MAGNETIC RESONANCE信号の変化を指標として,大腰筋に対するトレーニングの影響を検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】対象者は腰痛等既往のない男性14名,女性3名,平均年齢20.9歳(20-22)とした.本研究は首都大学東京倫理審査委員会の承認を得て行った.分析対象とした筋は大腰筋とし,対照として表在筋である腹直筋と脊柱起立筋を取り上げた.トレーニングは背臥位にて骨盤下に直径320mmの不安定板(専用器具)を置き,骨盤の肢位を保持したまま下肢を左右交互に各20秒,約20mm挙上する動作を20分行うこととした.なお股関節・膝関節は30度程度屈曲位とした.使用装置は1.5T Magnetom Symphony(SIEMENS社製)で,撮像法はTrue FISP(TR=4.30ms,TE=2.15ms,NEX=1,FA=50°,Scan Time=10sec,FOV=400mm)を用いた.なお分析部位は第4腰椎位としSlice厚=10mm,gap=2mmとした.専用器具は全て非磁性体であり,信号変化のみで筋の活動様相を評価するため,被検者と専用器具とをMR装置内に配置させた状態で実験の全てを施行した.信号強度の計測は画像分析ソフトウエアー(OSIRIS)を用いた.分析は左右の大腰筋,腹直筋,脊柱起立筋内に関心領域(ROI)を設定し,ROI内の信号強度平均値をMR信号とした.統計処理はトレーニング前後の平均MR信号を,対応のあるt検定にて比較した.有意水準は5%とした.<BR><BR>【結果】トレーニング前後のMR信号は,前平均111.1(SD13.6),後平均119.0(SD16.4)であり有意差が認められた.これに対して腹直筋では前平均291.7(SD64.9),後平均281.5(SD58.2),脊柱起立筋では前平均98.7(SD11.6),後平均94.5(SD11.2)であり差はなかった.<BR><BR>【考察】今回の撮影条件では比較的撮影時間が短いため腹部など動きの抑制が困難な部位の撮影に適している.また画像はT2*強調となり水分が白く強信号となる.このことから信号が強く変化することは筋活動直後の変化を示すとされている.今回の結果から本トレーニングにより大腰筋が選択的に活動することが示唆された.<BR>
著者
大塚 匠 新田 收 信太 奈美 古川 順光
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p><b>【はじめに】</b></p><p></p><p>脊髄損傷者では損傷レベル以下の交感神経障害により血管運動や発汗による熱放散がうまくできず,熱が体内に蓄積し,hyperthermiaの危険性が高いことが知られている。しかし実際のスポーツ現場や,損傷レベルによる体温の変化についての報告は少ない。そこで本研究では,実際の車いすスポーツ現場での体表温度の変化を損傷レベルの異なる被験者間で比較検討することを目的とした。</p><p></p><p><b>【方法】</b></p><p></p><p>対象はそれぞれ車いすバスケットボール,車いすラグビーを行っている男性の頸髄損傷者8名(上位群),胸髄損傷者9名(下位群)を対象とした。上位群・下位群にそれぞれの競技の1時間程度の試合形式の練習を行わせ,運動前,運動後の体表温度[℃]を日本アビオニクス社のInfReC R300を用いて撮影した。その後同社製のInfReC Analyzerにて画像解析を行った。体表温度は顔面の最大値を採用した。運動は空調設備のない体育館内にて行い,運動中の飲水や冷風機を使用してのクーリングは自由に行わせた。運動を行わせた時の体育館内の温度,湿度[%]は乾湿計にて記録した。統計解析は,体表温度を従属変数,上位群・下位群の2群を対応の無い要因,運動前後を対応のある要因とした,二元配置分散分析を行った。また単純主効果の検定を行った。データ処理はIBM SPSSver22を用いて行い,有意水準は5%とした。</p><p></p><p><b>【結果】</b></p><p></p><p>運動中の体育館内の温度・湿度の平均値(SD)は,上位群運動時,温度27.7℃(0.4)・湿度65.3%(1.7),下位群運動時,温度30.7℃(0.3)・湿度64.2%(1.6)であった。体表温の平均値(SD)は上位群で運動前35.6℃(0.90),運動後37.0℃(0.99)であった。一方下位群は運動前35.5(0.90),運動後35.9℃(0.96)であった。二元配置分散分析の結果,運動前-後で交互作用は有意であった。単純主効果検定の結果,上位群の運動前-後と,運動後の上位-下位群間で有意な差が示された。運動前の2群間や下位群の運動前後では有意な差は認められなかった。</p><p></p><p><b>【結論</b><b>】</b></p><p></p><p>先行研究において,高温下で頸髄損傷者の体温が,胸髄・腰髄損傷者や,健常者に比してより大きく上昇するとの報告がある。今回の研究でも同様に上位群で優位に上昇していた。この要因は,先行研究と同様に自律神経の障害によって皮膚血流の調節障害,発汗調節障害により体温調節能力が低下していたためと考えた。一方下位群では,体育館内温度が30.7℃と,上位群測定時よりも過酷な環境下での測定となったが,優位な上昇は認められなかった。この要因として,損傷部位がより下位であり,交感神経の残存領域が大きい事があげられるのではないかと考えた。また,今回障害歴の長い者が対象となっていたため,損傷部より上位の血管運動や発汗作用等の利用による,温度変化に対する適応能力が向上していたためではないかと考えた。今回の研究の結果,スポーツ現場において頸髄損傷者では体温が上昇しやすく,hyperthermiaの危険性が高い事が示された。</p>
著者
信太 奈美 古川 順光 池田 由美 来間 弘展
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E2Se2089, 2010

【目的】障害者スポーツには障害の程度を平等化するため競技別に運動能力を評価・分類するクラス分けが適応される.車椅子バスケットボールにおいては機能的クラス分けを採用し,プレー中のパフォーマンスによって選手の持ち点が決定される.持ち点は1.0~4.5まで0.5刻みに8段階に別れており,試合に出場する5人の持ち点が14.0を越えてはならないというルールがある.持ち点1.0・1.5は上位胸椎損傷者,持ち点4.0・4.5は下肢機能が使用できる脊髄損傷者や切断者で構成され,持ち点が高い方が障害は軽い.今回車椅子バスケットボール選手を対象にスキルを数値化し,効果的なトレーニングを行うための基礎的な資料を作成することを目的に,瞬発力,持久力,パスシュート,車椅子コントロール能力を評価するためのスキルテストを行い持ち点とスキルの関係を検討した.<BR>【方法】男性車椅子バスケットボール選手46名(年齢23.9±6.2)を対象に,パスの飛距離,20m走,3分間走,1分間シュート率,反復横移動の測定を行った.すべての測定は本人所有の車椅子バスケット専用車椅子で実施した.方法は(1)パスの飛距離:遠投は助走可能とし,投げ方は指定しない.チェストパスは静止した状態で行った.(2)20mダッシュ:静止した状態から20m区間での疾走タイムをストップウオッチで計測した.(3)シュート成功率:1分間シュート(1分間でできるだけ多くのシュートを放ち,成功したシュートの数を計測),ミドルシュート(指定した5カ所),フリースローの各シュート率を測定した.(4)3分間走:20m間隔に設置されたカラーコーンを往復し,3分間で走りきった距離を測定した.(5)反復横移動:1.2m間隔で3本の線を引き,対象者は車椅子にて中央の線をまたいで位置し,スタートの合図とともにどちらかのサイドの線に対し両キャスターが越すまで移動させ,次にバックターンにより中央線へ戻り反対サイドの線を両キャスターが越すまで移動し,再び中央線へ戻る.この運動を30秒間繰り返し行うことでサイドの線を通過した数を測定した.<BR>【説明と同意】対象者には測定方法といつで測定を中止できることを説明した.また,得られたデータを使用することに同意を得た。<BR>【結果】3分間走とパス項目に関しては持ち点が高くなる程好成績を示す傾向があった.20mダッシュでは持ち点2.0群・2.5群・4.5群が5.5secと最も速く、反復横移動では持ち点3.0群が15.6±0.7回と最も好成績を示したが,持ち点と20mダッシュ,持ち点と反復横移動の間に一定の関係はみられなかった.20mダッシュは持ち点1.0群と1.5群が5.9sec,持ち点2.0群と2.5群が5.5secとそれぞれ同じタイムを示した.また,シュート成功率は持ち点ではなく年齢との間に一定の関係がみられた.持ち点とパス項目について強い相関が見られ(遠投r=0.649,チェストパスr=0.505)、遠投とチェストパスにも強い相関が見られた(r=0.657).持ち点はパス項目の他に3分間走や全シュート率に相関が見られたが,20mダッシュや反復横移動には見られなかった.反復横移動は他の測定項目間との相関が低かった.20mダッシュと3分間走(r=-0.516),20mダッシュと遠投(r=-0.606)に負の相関があった.<BR>【考察】各スキルテスト項目と持ち点との関係においては,3分間走とパス項目に関しては持ち点に応じて運動機能が反映する結果であったが,一方で持ち点と20mダッシュ,持ち点と反復横移動の間に一定の関係はみられなかった.この結果は車椅子バスケットボール経験・練習頻度よる差が現れたこと,また同じ持ち点の選手であってもポジションや使用する車いすの違い(座面の高さや車輪の大きさ)により移動能力に影響を及ぼしていると推測される.20mダッシュは持ち点1.0群・1.5群,持ち点2.0群・2.5群とそれぞれ同じ値を示したことは、持ち点1.0の選手と1.5の選手の能力が近似していることを示しており,持ち点による能力評価の妥当性を示していると思われる.また、全般的なシュート成功率が持ち点ではなく年齢との間に一定の関係がみられたことは、年齢は経験年数を反映していることが予想され,車椅子バスケットボールの経験が長いほどシュート率が向上する傾向にあり,これはバスケットボールの競技特性でもある繰り返しによるスキルの獲得と考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】スポーツは体力の維持や二次的障害の予防、自己実現など行う意義は大きい.本研究を行うことで障害を持つ人の運動能力を測定し,指導法やトレーニングに活かすことができ,また障害を持つ人のスポーツの普及にも貢献するものである。<BR>