著者
金坂 成通 倉本 宜史 赤井 伸郎
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.149, pp.137-157, 2022 (Released:2023-02-10)
参考文献数
45

汚職は,予算権限を持った個人主体が,ある特定の団体に利益(資金)を誘導・配分する代わりに,個人での利益を得る仕組みであり,公益とは乖離し,社会全体での効率的な資源配分を歪める要因となる。新たな資金を配分する場合には,歳出総額は拡大し,また,資金配分が非効率になる場合には,特定分野の資金が拡大し,歳出の無駄が発現すると考えられる。本稿は,汚職の存在と歳出の増加との関係について,汚職は発覚するまで存在がわからないという点に注意しながら,統計データを用いて明らかにする。 先行研究の多くがクロスカントリーデータを用いており,国家間の財政制度の違いを考慮できていないという限界を踏まえ,日本国内のデータを用いたことが,本稿の新規性である。本稿では,初めて日本の都道府県データを用いて,汚職発覚が歳出(歳出総額,土木費および落札率)に与える影響を検証している。 推定結果から,汚職の発覚後に歳出を抑える可能性がある事が示された。加えて,政治的状況による汚職発覚の影響を分析した結果,選挙において得票率が高かった知事のいる地方自治体ほど(競合する他候補者の得票率が低いほど),汚職発覚による歳出削減の効果は抑制されることを示唆する結果となった。この結果より,政治構造次第では,汚職発覚が直ちに歳出削減に繋がるわけではなく,知事の行動についても注視するべきという含意も得られる。
著者
赤井 伸郎 倉本 宜史
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.199-223, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
11

本稿は,将来の港湾の整備・運営の在り方を考えるうえで欠かせない視点として,港湾連携の実態を把握するため,これまでになされた港湾投資のパネル・データから,港湾間競争とも言える国内の港湾同士の相互依存関係の実態を検証するものである。また本稿は,現状把握や分析の工夫により,これまで行われてきた港湾政策を,港湾間の競争の観点(国内の港湾同士の相互依存関係)から,その実態を明らかにする点で意義が高いと言えよう。分析の結果,港湾間で競争がなされてきたこと,また,その競争に影響をもたらす参照先や港湾規模によっては,競争の程度が異なることも見出された。国内の港湾間に競争が存在するという,この結果は,連携の必要性を示唆しており,連携に向けては,港湾間の相互参照先を考慮したうえで,補助政策を含めた,より一層の国家戦略が必要であることを示唆していると言えよう。
著者
金坂 成通 倉本 宜史 赤井 伸郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.160-183, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
22

現在,公営交通事業において過剰投資や非効率経営による問題点が指摘されている。今後は,民間同様の経営効率性を持って,民営化などの組織形態の変更も含めた改革が求められている。 本稿では,このような状況にある公営交通事業の中でもバス事業と地下鉄事業に対し,平成11年度から平成16年度までの年度間におけるマルムクイスト生産性変化指数を計測した。計測結果から,年度ごとに公営バス事業,地下鉄事業ともに各都市のマルムクイスト生産性変化指数にばらつきがあることがわかった。そして,マルムクイスト生産性変化指数の程度に影響を与えている要因を実証分析において検討した結果,公営バス事業の生産性の変化には,補助金が生産性変化指数を低下させる可能性,また経営基盤強化のための経営計画の実施が効果的である可能性が実証分析により示唆された。また,公営地下鉄事業については委託の促進が生産性変化に効果的である可能性が示唆された。