著者
倉盛 美穂子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.121-130, 1999-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
5 3

本研究は, 異なるレベルのペアが共同で課題に取り組む場合, 被験児の話し合いへの取り組みによって, 成績の伸びや話し合い中の内容に違いがみられるのかについて検討を行った。その際に, 下位のレベルの被験児の話し合いへの取り組み (主張性・認知的共感性) が, 成績の伸びや話し合い中の内容に及ぼす影響を検討した。本研究では, 共同で話し合う課題として道徳判断課題を使用した。また, 道徳レベルが下位の被験児を, 主張性, 認知的共感性の高低によって4つのグループに分けた後に, 上位レベルの被験児とのペアリングを行った。被験児は3回の話し合いセッションに参加した後, 再び道徳レベルを測定された。この話し合いセッション後の被験児の道徳レベルの変化と, 話し合いセッション中の発話内容について分析を行った。その結果, 下位レベルの被験児の発話は, 主張性が高いと課題に記述された内容をそのまま述べる発話が多く, 認知的共感性が高いと記述内容だけでなく記述内容を発展した内容の発話が多かった。また, 下位レベルの被験児の主張性と認知的共感性は, 上位レベルの被験児の発話数にも影響していた。このような主張性・認知的共感性の違いが発話に及ぼした影響は, 下位レベルの被験児の課題成績の伸びに反映されることが明らかになった。