著者
岡村 靖 北島 正大 荒川 公秀 立山 浩道 永川 正敏 後藤 哲也 倉野 彰比古 中村 正彦 丸木 陽子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.91-102, 1979-03-01

人間の寿命は70年±10年であり, 無限の空間と久遠の宇宙実存において思惟するならば, 人間の一生は瞬時の生命に過ぎない。しかし, その間, 先天的な素因, および, 環境要因に加えて, 感情や意志, すなわち, 人間の大脳皮質, とくに, 新皮質の神経細胞の機能が, 側体のhomeostasisを司る内分泌一自律神経系に種々の影響を及ぼして疾病が発生し, また, 多様な予後を示すので, 心身相関の問題は, 疾病の発生, 経過, および, 治癒の上に極めて重要である。したがって, 疾患の発生機序について, 心理学, 内分泌学, ならびに, 自律神経学の3方面から, 系統的な研究, ならびに, 考察を行い, 疾患のとらえ方に新しい概念を導入した。そして, この概念に基づいて疾患の診断と治療を行なう意義の重要性を提起した。その具体例として, 内分泌疾患, 自律神経失調症, および, 分娩における, 心身の環境因子と精神-自律神経-内分泌系との関連について研究を行った成績を述べた。(1979年1月16日 受付)