著者
川口 春馬 倪 恨美
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

研究は、弱酸型モノマーと弱塩基型モノマー、骨格モノマー、架橋用モノマーの沈殿共重合により、pH応答性ヒドロゲル微粒子を作製し、粒子の物性のpH応答性を確認し、この粒子に担持された低分子物質をpHによって放出制御することを目的とするものである。pH応答性ヒドロゲル粒子は、受け入れ研究者(川口)が以前研究したもの(Kamijo, Y., et al., Angew.Macromol.Chem.,240,187(1996))であるが、Ni博士は川口らが提唱している重合機構に異議を唱え、同君独自のメカニズムを考案した。それによれば、系は重合が始まる以前から不均一系であり、存在する超微小液滴が重合粒子の核となるであろうということである。Ni博士はこれらの成果を二報の論文^*にまとめた。得られた両性ハイドロゲル粒子を低分子化合物の担体として用いその放出をpHで制御することの可能性を探るのが後半のテーマであった。まず、ハイドロゲル粒子の体積のpH応答性を調べるため、HClとKOHとでpHを調整した系で動的光散乱法により水中での粒径を求めた。弱酸性モノマーとしてメタクリル酸(MAc)、弱塩基性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレー(DMAMA)を等モル用いて得られた粒子はpH6付近で粒径が最小となり、そのときの粒径は、低pHあるいは高pHにおける粒径の約1/3であった。粒径が最小となるpHはDMAEMA/MAcによって変化させることができた。ただし、粒径はpH以外にイオン種、イオン強度にも依存した。こうして、希望するpH応答性を持ったハイドロゲル粒子を設計するための指針をまとめることができた。^*2報ともNi, H.-M., Kawaguchi, H., J.Polymer Sci., A.Polym.Chem.,