著者
川口 春馬
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.922-931, 1984
被引用文献数
3

Research and development on the preparation of novel polymer microspheres and their applications have been accelerated in this decade. This article deals with polymer catalysts and reagents which have functional groups on and in polymer microspheres or beads. Immobilization of functional groups on polymer microspheres causes not only simplification of the recovery of reagent from the reaction system, but also changes in the rate, selectivity, and pattern of reaction in most cases. Dependence of these changes on the physical and chemical structure of polymer microspheres is discussed and a guide is given for the preparation of polymer microspheres having desirable functions.
著者
川口 春馬 倪 恨美
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

研究は、弱酸型モノマーと弱塩基型モノマー、骨格モノマー、架橋用モノマーの沈殿共重合により、pH応答性ヒドロゲル微粒子を作製し、粒子の物性のpH応答性を確認し、この粒子に担持された低分子物質をpHによって放出制御することを目的とするものである。pH応答性ヒドロゲル粒子は、受け入れ研究者(川口)が以前研究したもの(Kamijo, Y., et al., Angew.Macromol.Chem.,240,187(1996))であるが、Ni博士は川口らが提唱している重合機構に異議を唱え、同君独自のメカニズムを考案した。それによれば、系は重合が始まる以前から不均一系であり、存在する超微小液滴が重合粒子の核となるであろうということである。Ni博士はこれらの成果を二報の論文^*にまとめた。得られた両性ハイドロゲル粒子を低分子化合物の担体として用いその放出をpHで制御することの可能性を探るのが後半のテーマであった。まず、ハイドロゲル粒子の体積のpH応答性を調べるため、HClとKOHとでpHを調整した系で動的光散乱法により水中での粒径を求めた。弱酸性モノマーとしてメタクリル酸(MAc)、弱塩基性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレー(DMAMA)を等モル用いて得られた粒子はpH6付近で粒径が最小となり、そのときの粒径は、低pHあるいは高pHにおける粒径の約1/3であった。粒径が最小となるpHはDMAEMA/MAcによって変化させることができた。ただし、粒径はpH以外にイオン種、イオン強度にも依存した。こうして、希望するpH応答性を持ったハイドロゲル粒子を設計するための指針をまとめることができた。^*2報ともNi, H.-M., Kawaguchi, H., J.Polymer Sci., A.Polym.Chem.,
著者
今西 幸男 松田 武久 川口 春馬 片岡 一則
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

長さ5cmのポリウレタン管の内壁に細胞増殖因子と接着因子を共固定化し,管の一端にシードした内皮細胞が培養によって成長し,他端まで管壁を一様に覆うのに要する時間が約1/2に短縮された。また,90日以上培養を続け,管壁が完全に内皮細胞層で覆れたあとも,細胞層ははく離しなかった。さらに,共固定化PMMA膜を用いて培養した内皮細胞のプロスタサイクリン分泌量は,流殖因子だけを固定化した場合の約1,7倍であった(今西)。ボロン酸素含有率を高めた水溶性ポリマーは,リンパ球の増殖能を有し,リンパ球増殖促進剤としてレクチン様の機能を有することが明らかとなった。このような合成ポリマーによるリンパ球活性化は,非抗原性,安定性など,天然レクチンに比して優れた特徴が期待され,新しい生物応答調節剤としての展開が考えられた(片岡)。表面構造をさまざまな制御した高分子ミクロスフェアを用いて,表面構造との生体成分との相互作用性の関係を解析した。また,DNA固定化ミクロスフェアを用いてDNA結合性転写活性因子の精製効率を上げるためDNAの固定化量を高めることを試み,成功した。さらに,細胞接着因子の活性部位テトラペプチド(RGDS)を固定化したミクロスフェアに対する顆粒球の認識応答として,特異的な活性酸素に基づく酸素消費を観察した(川口)。人工基底膜や平滑筋細胞を組め込むことにより安定性を高めた内皮細胞層は,非凝血性を著明に促進し,また,階層性構造をとることにより,高次の配向組織化をもたらした。平滑筋細胞の形質転換は,(1)生体中の環境因子(体液性因子および内皮細胞との細胞間相互作用),(2)拍動,および(3)三次元環境による細胞の形態,などの諸因子によって起こると考えられた(松田)。
著者
堀江 一之 高橋 賢 川口 春馬 町田 真二郎
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(B)
巻号頁・発行日
1998

今年度は、昨年度から引き続き行ってきている単一色素を含む両親媒性高分子ユニマーの光化学ホールバーニングの研究に加えて、(1)高効率発光デンドリマーの合成とその単一微粒子分光および、(2)蛍光法による刺激応答性微粒子の単一微粒子観察とその評価を行った。前者については、コアにジフェニルアントラセン、表面にピレンを有する2世代のデンドリマー分子を合成した。溶液中337nmの光で主にピレンを励起した場合、デンドロンではピレンのエキシマー蛍光が観測されるが、デンドリマーではピレン由来の発光は全くみられず、コアからの発光のみが観測された。デンドリマー稀薄溶液から基板上に作成した凝集体微粒子は、溶液中よりも短い寿命を示した。また溶液中、凝集体いずれの場合も、エネルギー移動に由来する発光の立ち上がりは観測されず、エネルギー移動が非常に高速に起こると結論した。後者については、表面にpoly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAM)を有し、環境に応じて粒径を変化させるコアシェル型微粒子のゲル内部もしくはヘア末端に、蛍光プローブであるダンシル基を導入し、シェル層のミクロな極性・粘性を評価した。水-アセトン混合溶媒中での微粒子の粒径は、通常の(コアシェル型でない)PNIPAMゲルと同様の挙動を示した。しかし、プローブ周囲の極性・粘性を反映する蛍光ピーク波長は、水中で微粒子とゲルとでは大きく異なり、微粒子のプローブ周囲が疎水的であると示唆された。水-メタノール、水-DMSO混合溶媒系でも同様の結果となった。共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡により、微粒子個々の観察を行ったところ、コアに相当する部分がシェル層より明るい像が得られた。以上の結果より、疎水性プローブであるダンシル基は、水中ではポリスチレンコア近傍に寄り集まると考えられる。