著者
豊住 頼一 宮崎 俊巳 平野 実 光増 高夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.594-607, 1997-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9

喉頭筋の系統進化は原始喉頭筋のM. taryngei ventralis et dorsalisから直接進化すると伝統的に言われてきた. しかし, 私達が観察したウシガエル, スッポン, 白色レグホンの検索では, 私達はそれと同じ種類の筋を観察できなかつた. むしろ, それらの筋とは異なる筋を観察した. したがつて, 私達の検索の結果は肺魚と哺乳類との間に, 喉頭筋の直接進化は存在しないことを示唆している. 研究方法と結論前記三種類の動物の生体から喉頭を摘出した後, 双眼顕微鏡下に外喉頭筋以外の喉頭筋を比較観察した. 結果は次のようであつた.a. 原始型 (肺魚類, 初期両生類型)Mm. laryngeus ventralis et dorsalis and Mm. sphincter laryngis (from Goeppert; fixer of the glottis)b. 移行型 (両生類, 爬虫類, 鳥類型)fan shaped laryngeal mescles (fixer of the glottis)c. 哺乳類型M. intrinsic laryngeal muscles (closer of the glottis)したがつて, 喉頭筋の進化は原始型から移行型を経て哺乳類へ進化発達することが結論された. つまり, 原始型から哺乳類への直接進化はあり得ないことが確認された.
著者
藤生 雅子 光増 高夫 平野 実
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.2-7, 1988-01-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

妊娠に伴い著しいピッチの低下をきたした音声障害の1症例について, 声域, 話声域, および楽な発声時の声の基本周波数 (F0) を経時的に観察した.妊娠23週で, 声域の上限は6半音, 話声域の上限は9半音低下した.F0もB2まで低下した.出産後5カ月間経過観察した後, 保存的治療として音声治療を2カ月施行した.出産後の7カ月間, 声域の上限は妊娠前より5~15半音低い範囲で変動し, 経時的な声域拡大はなかった.話声域は上限が徐々に上昇し, 音声治療後はさらに上昇した.F0は音声治療後, わずかに上昇した.いずれの場合も妊娠前の状態にまでは回復しなかった.音声障害の発現について, エストロゲンのピアルロン酸に対する作用から若干の考察を加えた.