著者
光浪 睦美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.348-360, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
37
被引用文献数
20 8

本研究は, 達成動機や目標志向性が学習行動に及ぼす影響について, 過去の認知(以下, 過去認知)と将来の期待(以下, 将来期待)の組み合わせによって設定された4つの認知的方略(方略的楽観主義(SO), 防衛的悲観主義(DP), 非現実的楽観主義(UO), 真の悲観主義(RP))の違いに焦点を当てて検討することを目的とした。大学生407名を対象に質問紙調査を行い, 過去認知(ポジティブ・ネガティブ)×将来期待(高・低)の2要因分散分析を行った結果, 将来の期待が高い群は熟達目標を, 期待が低い群は遂行回避目標を, 過去の認知がポジティブな群は遂行接近目標を採用しており, DP者は遂行接近目標と遂行回避目標の両方をもつことが示された。また, 達成動機や目標志向性および学習行動との関連では, 熟達目標や遂行接近目標は学習行動に正の影響を与えていたが, 遂行回避目標は負の影響を与えていた。認知的方略ごとの検討では, 達成欲求が熟達目標に, 失敗恐怖が遂行回避目標に影響を及ぼす点は共通していたが, 遂行接近目標に関しては群で違いがみられた。達成動機, 目標志向性, 学習行動の観点から, 4つの認知的方略の特徴の違いが議論された。
著者
光浪 睦美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.124-137, 2012-11-30 (Released:2013-02-11)
参考文献数
37
被引用文献数
6 3

本研究の目的は,大学生401名を対象に,対人関係における動機や目標志向性および対人行動が,過去の認知と将来への期待の組み合わせによって設定された認知的方略のタイプ(方略的楽観主義(SO),防衛的悲観主義(DP),非現実的楽観主義(UO),真の悲観主義(RP))で異なるか検討することと,対人関係における動機,目標および行動の因果プロセスについて検討することであった。その結果,SO群とUO群は親和願望が高く,DP群とRP群は拒否不安が高いことが示された。また,SO群とUO群は経験・成長目標をもち,積極的・援助的な対人行動をとっていた。因果プロセスの検討から,4つの群すべてにおいて親和願望が経験・成長目標を介して積極的な対人行動に影響を及ぼすことが明らかになったが,UO群とRP群においては,自分の性格に対する良い評価を得るために一見ネガティブにもみえる行動をとる可能性が示唆された。