著者
野田 加奈子 児玉 悟 野田 謙二 渡辺 哲生 鈴木 正志
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.898-906, 2010 (Released:2011-06-10)
参考文献数
22
被引用文献数
14 11

深頸部感染症は抗菌薬が発達した今日では減少傾向にあるが, 重症化すると致死的な疾患である. 今回, 過去10年間に経験した深頸部感染症299例について, 深頸部膿瘍群と扁桃周囲膿瘍群に分けて, 年齢, 性別, 基礎疾患, 前治療, 肥満の程度, 喫煙歴, 感染の原発部位, 膿瘍の存在部位, 検出菌, 使用抗菌薬, 手術方法, 治療経過, 入院期間などについて比較検討した. さらに, 年齢, 性別, 喫煙歴, 糖尿病, 肥満 (BMI≥25, BMI≥30) の有無によって, 初診時のCRPと在院日数に差がみられるか検討した. 深頸部膿瘍群は50歳代に, 扁桃周囲膿瘍群では20歳代にピークがあり, 健常人と比べて両群ともに喫煙率が高く, 深頸部膿瘍群は肥満, 糖尿病が多い傾向がみられた. また扁桃周囲膿瘍では60歳以上群で, 深頸部膿瘍では高度肥満群で, 在院日数が長くなる傾向がみられた.
著者
児玉 悟
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.12, pp.1406-1413, 2015-12-20 (Released:2016-01-15)
参考文献数
26
被引用文献数
5

鼻閉の改善は鼻科手術の重要なアウトカムであり, 鼻閉の改善のためには, その原因や病態を的確に捉え, 鼻腔形態の矯正を行うことが重要である. 鼻中隔弯曲症は鼻閉を来す代表的な疾患であり, 鼻中隔矯正術は耳鼻咽喉科医にとってはごく一般的な手術である. しかし前弯が顕著な症例や外鼻変形を伴っている症例では, 通常の鼻内法による鼻中隔矯正術では,弯曲の矯正が困難なことが多く, 満足する結果が得られないこともある. このような鼻中隔弯曲症に対しては, 外鼻と鼻中隔を立体的な一つの構造物と考え, 矯正を行う septorhinoplasty (鼻中隔外鼻形成術) が有効である. 外鼻手術はいまだにわが国の鼻科臨床においてはマイナーな分野であり, 外鼻への手術操作に対しては, 耳鼻咽喉科医自身も抵抗を感じるものも少なくないのが現状であるが, 正確な鼻内所見の把握と鼻閉の評価ができるのは, おそらく耳鼻咽喉科医のみである. 患者の QOL 向上のためにも鼻閉改善のための外鼻手術においては鼻閉治療の中心であるべき耳鼻咽喉科医が積極的に関与すべきであると思われる.