著者
渡辺 哲生 鈴木 正志
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.345-352, 2005-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11
被引用文献数
2

昭和58年10月から平成16年3月まで当科で入院加療した扁桃周囲膿瘍209例の細菌検査について検討した.187例 (89%) から351株の細菌が検出された.約半数の症例が混合感染で, 約70%の症例から好気性菌, 約40%の症例から嫌気性菌, 約20%の症例から両者が検出された.好気性菌は227株で, S.pyogenes, S.milleri groupが, 嫌気性菌は124株で, Prevotella属, Fusobacterium属が多くみられた.薬剤感受性検査の結果をNCCLSの基準からみると扁桃周囲膿瘍においては耐性菌の問題はなかったが, セフェム系抗菌薬に感受性の低いS.milleri groupの増加, クリンダマイシンに対する耐性菌がみられたので抗菌薬の使用に注意を要すると考えた.
著者
野田 加奈子 児玉 悟 野田 謙二 渡辺 哲生 鈴木 正志
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.898-906, 2010 (Released:2011-06-10)
参考文献数
22
被引用文献数
14 11

深頸部感染症は抗菌薬が発達した今日では減少傾向にあるが, 重症化すると致死的な疾患である. 今回, 過去10年間に経験した深頸部感染症299例について, 深頸部膿瘍群と扁桃周囲膿瘍群に分けて, 年齢, 性別, 基礎疾患, 前治療, 肥満の程度, 喫煙歴, 感染の原発部位, 膿瘍の存在部位, 検出菌, 使用抗菌薬, 手術方法, 治療経過, 入院期間などについて比較検討した. さらに, 年齢, 性別, 喫煙歴, 糖尿病, 肥満 (BMI≥25, BMI≥30) の有無によって, 初診時のCRPと在院日数に差がみられるか検討した. 深頸部膿瘍群は50歳代に, 扁桃周囲膿瘍群では20歳代にピークがあり, 健常人と比べて両群ともに喫煙率が高く, 深頸部膿瘍群は肥満, 糖尿病が多い傾向がみられた. また扁桃周囲膿瘍では60歳以上群で, 深頸部膿瘍では高度肥満群で, 在院日数が長くなる傾向がみられた.
著者
渡辺 哲生
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.9-17, 2016-03-31 (Released:2016-06-23)
参考文献数
12
被引用文献数
9

扁桃周囲膿瘍, 深頸部膿瘍ともに致死性を有する疾患で耳鼻咽喉科医として理解しておかなければならない疾患である. 疾患の理解のためには浅頸筋膜, 深頸筋膜浅葉・中葉・深葉からなる筋膜と舌骨上と下に区分される間隙についての解剖を理解する必要がある. 傍咽頭間隙が深頸部の中心的な間隙であり, 縦隔と連続する間隙が臨床的に重要である. 扁桃周囲膿瘍, 咽後膿瘍, 傍咽頭間隙膿瘍, 顎下間隙膿瘍のいずれも治療の際に外科的治療,気道確保を念頭におかなければならない.