著者
輿古田 孝夫 石津 宏 高江洲 なつ子 赤嶺 依子 垣花 シゲ 佐和田 重信 兪 峰 森山 浩司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.681-687, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

沖縄県は全国でも有数の長寿県であり,伝統文化と風土に培われた地域性を有している.本研究では,こうした沖縄の地域特性をふまえ,地域高齢者のメンタルヘルスとその関連要因について検討することを目的とした.沖縄県中部に位置する具志川市平良川地区の65歳以上の地域住民120名を対象に,自尊感情と関連する要因を検討した.その結果,self-esteem得点が有意に高値を示した者は,男女ともに健康状態が良好で,暮らしにゆとりがあり,生活満足度や健康度自己評価が高かった.また,地域の伝統行事や祭事の際に役割を有するものはself-esteem得点も有意に高値を示した.沖縄県中部に位置する中城村2地区の65歳以上の地域住民162名を対象に, self-efficacy(自己効力感)に着目した調査では,男女とも健康度自己評価,老研式活動能力指標の社会的役割が有意な関連を有した.男女別にみると,男性では伝統的祭事への参加状況で,女性では経済状況で有意な関連を認めた.また,同村における80歳以上の地域住民610名を対象にCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)を用いた抑うつ傾向との関連をみると身体的自立直やself-esteem得点,主体的な日常生活や社会への関心度,社会参加の程度とCES-D得点では,有意な負の相関関係がみられた.以上の結果から,高齢者のメンタルヘルスには,心身の健康状況や社会的役割,社会的活動性といつだ多くの要因が関連していた.また沖縄の伝統的行事や祭事が高齢者のQOL(quality of life)に影響している可能性が示唆された.今後,伝統的社会風土を基盤とする地域性を考慮した高齢者の健康長寿対策の必要性が示唆された.
著者
石津 宏 豊里 竹彦 太田 光紀 森山 浩司 大城 和久 輿古田 孝夫 津田 彰 矢島 潤平 兪 峰 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.671-680, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
34

本研究は,固有の祭祀行事が生活の中に息づく沖縄県知念村久高島の高齢者を対象とし,主観的幸福態と健康状態を調べ,その関連要因を検討するとともに,唾液を採取し,その中に含まれるS-IgAや,脳内神経伝達物質の主要代謝産物であるMHPGを測定し,心身相関について検討することを目的とした.久高島で年間20数回も行われる神聖な祭祀行事が,高齢者の主観的幸福感,抑うつ感などのメンタルヘルスや免疫系統に与える影響についても検討した.その結果,久高島の高齢者(65〜96歳,50名)の健康度自己評価は前期高齢者,後期高齢者とも高く,健康老人が多かった.また,健康度自己評価とWHO/QOL26,LSI-K,PGCモラールスケールの3尺度間に有意な正の相関がみられた.唾液中S-IgA値は,70代,80代,90代とも高く,年齢による減弱はみられていない.S-IgAに関与する因子は重回帰分析の結果,WHO/QOL26の下位項目「手段的自立」と有意な関連がみられた.神事を経験した高齢女性では,神事(「祭り」)の後には,唾液中free MHPGが減少する傾向こあった(p<0.10).このことから,久高島高齢者は主観的な健康だけでなく,実際の免疫系統も健康であるという心身相関が示唆された.久高島の伝統的な祭祀行事は心身の安らぎを与え,高齢者のメンタルヘルスと健康に重要な関わりをもつことが示唆された.
著者
森山 浩司 石津 宏 輿古田 孝夫 豊里 竹彦 太田 光紀 大城 和久 馬 宏坤 兪 峰 佐和田 重信 柳田 信彦 名嘉 幸一 和氣 則江 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.661-669, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

健康長寿要因としてのメンタルヘルスの重要性を研究するために,長寿地域である沖縄県北中城村と固有の祭祀行事が生活に息づく知念村久高島において,高齢者の主観的幸福感と健康状態の関連要因について検討した.分析対象は,北中城群173名(男性75名,女性98名),久高群77名(男性24名,女性53名)の65歳以上の高齢者である.主観的幸福感(生きがい感)の指標としてPGCモラールスケール,生活満足度尺度K(LSI-K)を用い,健康度自己評価得点に及ぼす関連因子について重回帰分析を行った.健康度自己評価得点と有意な関連要因は,北中城群ではPGOモラール得点,学歴,久高群では老研式活動能力指標,女性,LSI-K得点,小遣いであった.また一方,主観的幸福感に影響を及ぼす関連因子として健康度自己評価,老研式活動能力指標などがみられたことは,心の健康状態と体の健康状態は表裏一体であることを示している.健康度自己評価にPGOモラール得点,LSI-K得点が有意に関連を示したことは,身体の健康状態の生成に主観的幸福感(生きがい感)がヘルスプロモーション要因として関与することを意味する