著者
八塩 裕之
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.283-301, 2013 (Released:2021-10-26)
参考文献数
10

近年,人口の高齢化により勤労所得から公的年金給付への所得の代替が進んでいる。年金給付の増加は大きく,勤労所得の減少のかなりの部分を賄うが,公的年金等控除の影響などで年金の多くは課税ベースから除かれるため,やはり課税ベースは縮小してしまう。しかし,こうした税制を維持したままでは,今後個人住民税の課税ベース縮小がとどまることなく進む可能性がある。その結果,さらなる税収ロスとともに,地方自治体間の税収調達力格差の拡大が懸念される。こうした問題意識をもとに,本稿では経済低迷による勤労所得減少や税制改革の効果をコントロールしつつ,高齢化が個人住民税の課税ベースに及ぼす影響について計量分析を行う。そのうえで,日本の税制の問題点を検討する。
著者
八塩 裕之
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.179-199, 2006 (Released:2022-07-15)
参考文献数
11

事業で得た収益は本来,労働や資本の対価にしたがって給与や配当などに分配されるべきである。しかし中小事業者の場合,この分配の決定(「所得分散行動」とよぶ)が節税動機によって大きく歪められていることが,欧米で指摘されてきた。一方日本でこうした中小事業者の所得分散行動と節税動機の関係を分析した研究は非常に少ない。本稿では個人自営業者の家族従業員(専従者)への給与分配による所得分散行動に注目し,節税動機がそうした行動に影響を与えていると考えられることを示す。そのうえで,こうした行動がもたらす経済学的な問題点について考察する。
著者
田近 栄治 八塩 裕之
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.177-194, 2005 (Released:2022-07-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

アメリカでは税が個人事業者の事業形態選択に影響を及ぼしてきた。そこでは所得税と法人税の限界税率差が重要とされ,とくに1986年の所得税減税の効果は注目された。 一方,日本でも税と事業形態選択の問題は重要であったが,その原因はアメリカとは異なるものであったと考えられる。日本では個人形態と法人形態で適用される控除,具体的には給与所得控除の適用可否が異なることが重要であった。とくに1974年の控除引き上げは大きく,これが事業の法人化による節税を引き起こしたと考えられる。本稿では個人事業者のこうした節税行動を分析し,それを通じて日本の所得税の問題点を考察する。