著者
内海 卓哉 石澤 正夫 高畑 未樹 八巻 通安 佐藤 寿晃
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.453-459, 2020-12-25 (Released:2021-01-23)
参考文献数
33

目的:本研究は,就寝前のブルーライトを主波長とする青色光照射が,睡眠障害を有さない若年男性の主観的睡眠感,注意力,作業効率に及ぼす影響を調査することである.方法:対象は,12人の睡眠障害を有さない若年男性(年齢:20-23歳)であった.対象者は就寝前の 1 時間,1白熱電球,2青色光の 2 条件で照射を受けた.照射を行った翌朝,主観的睡眠感と注意力,作業効率について測定を行った.主観的睡眠感はOSA睡眠調査票(MA版),注意力は精神運動ヴィジランス課題,作業効率はパーデューペグボードを用いた.結果:白熱電球照射後とブルーライト照射後の 2 条件間で主観的睡眠感に有意な差は認められなかった.作業効率は,ブルーライト照射後で白熱光照射後と比較し有意に低下した.また,ブルーライト照射後の注意力では10分間の測定時間の内,後半 5 分部分で反応時間が有意に延長した.結論:本研究の結果は,就寝前のブルーライト照射が翌日の注意力と作業効率を低下させる可能性があることを示唆する.
著者
八巻 通安
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.516-522, 2005-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

心疾患におけるST-T波の成因を考察するため,以下の臨床検討およびモデル心臓での検討を行った.[心室再分極のシークエンスとT波]心室再分極のシークエンスとT波の波形との関連を,健常者および陰性T波を有する陳旧性心筋梗塞患者,心肥大患者で検討した.体表面心電図は体表面87誘導点から記録し,心室再分極のシークエンスをrecovery timeから推定した.陰性T波について検討したところ健常者,心肥大,心筋梗塞のrecovery timeと陰性T波高は高い相関関係が認められた.一方,陽性T波高については健常者,心肥大においてはrecovery timeはよく相関したが,心筋梗塞では相関がみられなかった.すなわち心筋梗塞の陽性T波高以外のT波形状の成因はおおよそ心室再分極のシークエンス説で説明可能であるが,心筋梗塞の陽性T波高に関してはこの説では説明できず,傷害電流の関与などが考えられると思われた.T波を理解するうえでコンピュータ心臓モデルでの検討は不可欠である.そこでわれわれはユニット分割三次元心臓モデルを用いいくつかの疾患モデルを作成し,形成されるT波およびU波の形状を観察した.[心筋梗塞の陰性T波]梗塞領域の心筋細胞の単純に欠失のみでは胸部誘導T波は陽性のままであった.そこで梗塞周囲心筋の活動電位持続時間(APD)を延長させたところ胸部誘導に陰性T波が出現した.心筋梗塞にみられる広範な陰性T波は梗塞周囲心筋の電気的リモデリングを反映と考えられる.[心肥大の陰性T波]単純に細胞の追加のみで心筋肥大を作成したところT波は平定化したが,陰性Tは生じなかった.陰性Tを生じさせるためには肥大心筋の1)興奮伝導遅延,2)APD延長のいずれかが必要であった.陰性Tを生じるような肥大心心筋では電気生理学的な変化が生じていることが示唆された.[虚血陰性U波]限局した筋層にM細胞を設定すると陽性U波が出現した.この条件で,局所的にM細胞のAPDを短縮させ心筋虚血を模したところ,体表面上の対応する局所に陰性U波が出現した.M細胞領域を含む局所的な心筋虚血が,陰性U波の成立に関与していることが推測された.