著者
出雲 俊之 柳下 寿郎 八木原 一博
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.64-76, 2012 (Released:2012-11-01)
参考文献数
31
被引用文献数
9 6

粘膜癌において,予後を左右する最も大きな因子はリンパ節転移だが,予後やリンパ節転移に相関する原発巣の因子としては,深達度と浸潤様式が重要である。口腔癌取扱い規約の臨床型分類には発育様式分類が用いられているが,これは従来からあった臨床視診型分類を基盤として,「分けることができて,分けることに意味のある分類」とのコンセプトのもとに,普遍性・再現性のある表在型・外向型・内向型の3型に再編したものである。現在この臨床発育様式分類については,内向型の中に特に予後不良な一群があり,肉眼像,組織像,病態などを踏まえた1病型としうるか否かが検討されている。この仕事は学術委員会WG1において進めていく予定であるので,ここでは次世代の臨床型分類として,浸潤様式を反映した新分類について解説する。私は,臨床型分類は浸潤様式を反映した分類にversion upされるべきであると考えている。外科病理学的仕事の進んだ消化管癌では,シルエット分類が臨床型分類として用いられているが,これは粘膜面の形態と浸潤様式を組み合わせた分類である。口腔扁平上皮癌で悪性度分類として使われている浸潤様式分類(YK分類)は,実はこのシルエット分類に相当し,次代の臨床型分類となりうるものと考えられる。肉眼所見や画像所見は目で見るものではなく,外科病理学的な知識を織り込んで読むものであり,臨床型分類とは,口腔癌に対する全ての知見の集大成としてあるべきものであろう。
著者
石井 純一 八木原 一博 桂野 美貴 住本 和歌子 宮嶋 大輔 柳下 寿郎 出雲 俊之
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.129-135, 2012-12-15
被引用文献数
6

舌癌の正確な切除のためには術前に腫瘍の進展範囲についての情報が必要である。進展範囲は生体と切除標本超音波像を用いて計測された。二つの超音波像における腫瘍の進展範囲に関して相違は認められなかった。しかし,生体の超音波像と病理標本における腫瘍の進展範囲とは有意な差があった(<i>p</i> < 0.05)。しかしながら,生体超音波像の進展範囲とヘマトキシリンエオジン染色病理組織標本との間には大きさに関して有意な相関関係があった(<i>p</i> < 0.01)。さらに,回帰分析によると生体超音波像の腫瘍の進展範囲から病理標本の腫瘍の進展範囲を正確に予測することができた(<i>R</i><sup>2</sup>:0.52~0.88)。<br>このように超音波検査で腫瘍の進展範囲を正確に把握することは舌癌の患者の外科切除を計画するための検査として有用な方法であることが示された。