著者
八田 隆司 櫻井 直文
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.319-337, 2003-03

「神」論は中世のキリスト教の時代だけでなく,近代においても重要なテーマである。ただ中世と異なって近代の「神」把握の特徴は,現実を超えた彼岸あるいは内的心中の問題に限定するのでなく,現実社会と密接な関係において捉えた点にある。本研究ではこうした方向性を近世においてきわめて異質な仕方で表現した哲学者としてスピノザを,同時にまたこの問題を近代的思考の枠組みにおいて総括した哲学者としてへーゲルを論ずることで,近世・近代における「神」把握の展開のいくつかの道筋を確認したい。尚,Ⅰのスピノザに関する問題を桜井が,Ⅱのへーゲルに関する問題を八田が担当している(なお,桜井担当部分は,今回の人文研研究費を活用して作成された電子テクスト・データベースを活用することによって得られた研究の成果である―Ⅰの注3参照)。