- 著者
-
内山 智枝子
武村 政春
- 出版者
- 一般社団法人 日本生物教育学会
- 雑誌
- 生物教育 (ISSN:0287119X)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.3, pp.167-172, 2018 (Released:2018-10-29)
- 参考文献数
- 8
現行の高等学校学習指導要領における生物教育では,高校生の9割以上が履修する「生物基礎」において,セントラルドグマの概念の理解が求められている.セントラルドグマのメカニズムを説明するためには,DNAとRNAの役割の違いを区別することが不可欠である.しかし,大学生を対象とした国内外の調査から,「複製」と「転写」に関する混同が報告され,高校生を対象とした調査でも,DNAとRNAの構造や構成成分の概念構築が曖昧であるとの問題提起がなされている.そこで本研究では,最終的な目標であるセントラルドグマの理解に不可欠な「複製」と「転写」におけるDNAとRNAの役割を,高校生が区別しているかどうか現状を把握し,その原因を追究することを目的として,高校1年生「生物基礎」履修者を対象に質問紙調査を実施した.質問紙調査の結果,「複製」と「転写」におけるDNAとRNAの役割を区別していない生徒の存在と,どのように混同しているのかその実態が明らかになり,記号や模式図,岡崎フラグメント,相補的結合が起こる鎖の数,「複製」や「転写」の必要性に対する誤った理解が,混同の要因となっていることが示唆された.このことから,提示するメカニズムの内容と使用する記号や模式図を生徒の実態に合わせて検討すること,「複製」や「転写」の必要性を強調し相補的結合に関する知識の転化を促すように学習環境や授業デザインを工夫することが,生徒の混同の解決につながるのではないかと考える.