著者
矢永 勝彦 西崎 隆 副島 雄二 吉住 朋晴 内山 秀昭 杉山 圭蔵 森本 修充 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.903-906, 1996-04-01

死体肝移植の施設特定を受けた本学での患者13人の登録と現況を呈示し, わが国における死体肝移植離陸への条件を述べる. 登録13人中5人が待機中に死亡, 3人が海外渡航し, 1人は飲酒再開にて登録抹消した. C 型肝硬変症の1人は27か月の待機の後, 多臓器不全への移行期に本学で血液型不適合移植を行うも, 術後73日目に死亡した. 肝細胞癌合併患者では待機中の quality of life が明らかに不良であった. 現在3人が待機中で, うち2人は counseling が精神面の管理に効果的であった. わが国の現状では死体肝移植の登録は患者に精神的余裕がある時期に行うのが良く, 肝細胞癌合併例では Stage l でコントロール可能な場合に限ると考えられる. また, 精神科医の治療への参加は極めて有用である. さらには病状の終末化, 癌進展, 飲酒再開などに備え, 登録抹消基準の明確化が重要である.
著者
武藤 純 調 憲 間野 洋平 本村 貴志 武石 一樹 戸島 剛男 内山 秀昭 武冨 紹信 前原 喜彦
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.985-990, 2011-08-01 (Released:2011-08-23)
参考文献数
12

症例は30代女性で,健診時,腹部超音波検査にて肝外側区域に限局する胆管拡張を指摘されたが充実成分を伴わず経過観察されていた.1年後,胆管拡張は左葉全域から総胆管におよび外側区域内に5cm大の充実性病変が認められた.精査の結果,粘液産生性胆管腫瘍(Intraductal papillary neoplasm of the bile duct;以下,IPN-Bと略記)と診断し,肝拡大左葉・尾状葉切除術,胆道再建を行った.腫瘍は外側区域を中心とする最大径5.5cmの多房性嚢胞性腫瘤で,病理組織学的にムチン産生性のIntrductal papillary adenocarcinomaであった.切除後11か月が経過した現在,再発なく経過している.IPN-Bの自然経過についてはいまだ不明な点が多く,本症例のように経過を観察しえた症例はまれである.若干の文献的考察を加え,報告する.