著者
八重樫 泰法 中島 章恵 細井 信之 福田 春彦 佐瀬 正博
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1648-1651, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
9

液体窒素の飲用による胃破裂報告は, 本邦における第1例目と考えられる.症例は17歳の男性. 高校学園祭の化学部の催しで, 液体窒素にジュースを混じて約30ml飲用した.飲用直後より激烈な腹痛が発症し, 当院救急外来に搬送された. 来院時, 著しい腹部膨満および筋性防御を認め, 腹部単純X 線で腹腔の約1/2を占める遊離ガスを認めた. CT検査で腹腔内の多量の遊離ガス, 後腹膜腔の遊離ガスおよび縦隔内の遊離ガスを認めた. 内視鏡検査では, 胃体部小彎側に縦走潰瘍を認めた. 緊急手術では, 胃体上部小彎に3cmの縦走する穿孔を認め, この部を縫合閉鎖した.術後経過は良好であり, 第26病日に軽快退院した. 液体窒素の飲用傷害について, 搬送時には凍傷を考慮したが, 実際は揮発窒素ガス産生による胃破裂が主であった.
著者
渡邉 雄介 中原 千尋 河田 純 大薗 慶吾 鈴木 宏往 宮竹 英志 井上 政昭 石光 寿幸 吉田 順一 篠原 正博
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.759-768, 2013-10-01 (Released:2013-10-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

症例は86歳の男性で,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)血栓症に対する血栓溶解療法・抗凝固療法を誘引として発症したコレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による腸閉塞に対し,単孔式腹腔鏡下手術(single incision laparoscopic surgery;以下,SILSと略記)を施行した.CCEによる腸閉塞はまれであり,これに対し単孔式を含めた腹腔鏡下手術を施行した報告はない.本症例に対しSILSを安全に施行するうえで,術前の閉塞部位の同定とイレウス管による腸管の減圧などが有効であった.今後,インターベンション治療や抗凝固療法の増加に伴いCCEの罹患数は増加するものと考えられ,一般消化器外科医もこの疾患の存在を認識することが重要である.また,本症例のようにCCEはSMA血栓症などの致死的な疾患を背景として発症する可能性のある疾患であり,外科的治療を考える際には低侵襲な単孔式を含めた腹腔鏡下手術も治療選択肢としてあげられると考えられた.
著者
加藤 恭郎 渡辺 孝 前田 哲生 垣本 佳士
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.745-751, 2011-06-01 (Released:2011-06-21)
参考文献数
12

わが国においてスターチ腹膜炎についての認識は低く,パウダーフリーの手術用手袋の普及も進んでいない.今回,虫垂切除後にスターチ腹膜炎を発症し,その後の経過を長期に観察しえた1例を経験したので報告する.症例は16歳女性で,1994年,虫垂炎に対し虫垂切除を行った.術後9日目から小腸通過障害をおこし,12日目に腹腔鏡下癒着剥離術を行った.黄色混濁腹水と腹膜小結節を認めた.腹水の培養は陰性であった.術後発熱と高い炎症反応が続いた.CTで腹水の貯留と腸間膜の肥厚を認めた.手袋のパウダーでの皮内反応が陽性であった.スターチ腹膜炎と判断しステロイド投与を行ったところ炎症反応は低下し,腹水も消失した.その後も小腸通過障害,複数回の腹痛があったがいずれも保存的に軽快した.スターチ腹膜炎が長期にわたり患者のQOLを悪化させた可能性があった.今後パウダーフリーの手術用手袋を普及させる必要があると思われた.
著者
問山 裕二 荒木 俊光 吉山 繁幸 坂本 直子 三木 誓雄 楠 正人
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.1431-1435, 2003 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1

今回我々は遅発性膿瘍およびapical bridge, blind loopによる回腸嚢の形態的問題が原因と考えられた2次性回腸嚢炎に対してsalvage operationを施行し, 良好に経過をした1例を経験したので報告する.患者は20歳の女性. 潰瘍性大腸炎2期分割手術の1期目手術後約3か月目に突然の粘血便を認めた. 回腸嚢の形態的問題およびperipouch abscessに起因する2次性回腸嚢炎と判断し, 残存直腸切除, 回腸嚢部分切除, 回腸嚢再建, 回腸嚢肛門吻合, 回腸人工肛門造設術を施行した. 術後回腸嚢の炎症は軽快し, 肛門機能低下も認めない. 現在は回腸人工肛門閉鎖術を終了し, 外来で経過観察中であるが回腸嚢炎は認めない.
著者
白石 好 森 俊治 磯部 潔 中山 隆盛
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.488-492, 2003 (Released:2011-06-08)
参考文献数
27
被引用文献数
1

非常にまれであるハンドル外傷による胃破裂とIIIa型膵損傷を合併した1例を経験し, 胃切除と膵胃吻合による尾側膵温存術式にて救命しえたので報告する. 患者は64歳の男性で, 交通事故による腹部打撲と吐血を主訴に救急搬送された. 腹部CTでFree Air, 腹腔内出血を認めたため胃破裂疑いで緊急手術となった. 手術所見は胃前壁の体下部から幽門前庭にかけて約7cmの破裂創と胃角部小彎に出血性潰瘍を認めた. また, 上腸間膜静脈右縁にて膵の完全断裂を認めた. 出血は胃潰瘍によるものと判断した. 止血のために胃切除施行し膵温存のため膵尾側の膵胃吻合を施行した. 急性期の経過は順調であったが, 軽度の膵液瘻を認めた. 退院6か月経過後でも血糖値, 膵外分泌機能には異常を認めなかった. 自験例と文献的考察から消化管破裂や大量出血を合併した症例では, 膵温存術式として膵胃吻合は適した再建法であると考えられた.
著者
佐藤 太一 山田 一隆 緒方 俊二 辻 順行 岩本 一亜 佐伯 泰愼 田中 正文 福永 光子 野口 忠昭
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.579-587, 2016-07-01 (Released:2016-07-23)
参考文献数
35

目的:痔瘻癌の臨床病理学的検討を行った.方法:1997年から2014年までに経験した痔瘻癌25例の臨床病理学的特徴と治療成績を検討した.結果:平均年齢は58歳(34~82歳),男性23例,女性2例であった.痔瘻癌の診断までの痔瘻罹病期間は中央値12年(1~50年)で,7例がクローン病合併例であった.確定診断に至った方法は,腰椎麻酔下生検が14例,内視鏡下生検が6例,局麻下生検が3例,細胞診が1例,開腹手術中の迅速組織診が1例であった.確定診断までの検査回数は平均2回(1~4回),診断までに要した検体数は平均7個であった.14例に腹会陰式直腸切断術,10例に骨盤内臓全摘術,1例にハルトマン手術が行われた.組織型は粘液癌が68%,リンパ節転移陽性症例が40%,4例に鼠径リンパ節転移を認めた.全25例における5年生存率は45.8%であった.根治度別にみると,根治度AB症例は根治度C症例と比べて有意に予後良好であった(P<0.0001).クローン病合併の有無で痔瘻癌を2群に分けて臨床病理学的因子を比較したが,クローン病合併例は癌診断年齢が有意に若いこと以外,2群間で有意差を認めなかった.結語:長期の難治性痔瘻症例は臨床症状の変化,悪化に着目し,痔瘻癌が疑われた場合は,積極的に生検組織診断を繰り返し行うことが重要である.切除可能な症例に対しては完全切除を目指した積極的な拡大手術が望まれる.
著者
柏原 元 田尻 孝 中村 慶春 宮下 正夫 内田 英二 笠井 源吾
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.198-201, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
17

水棲動物エイによる刺傷は, その鋭利な刺棘と刺毒による著しい局所の損傷と炎症などが特徴である. 今回我々は, 腹部エイ刺傷により腸管脱出を来した極めてまれな症例を経験したので報告する. 症例は39歳の男性で, 船上での仕事中, 巨大エイの毒棘により右鼠径部を刺傷したため, 救急車で当院に搬送された. 来院時, 腹腔外へ脱出した腸管が認められたため緊急手術となった. 脱出した腸管を還納し, 刺創部をデブリードマンした後40℃以上の温生食で十分に洗浄し, 腹壁を縫合閉鎖した. タンパク毒であるエイ毒には温浴が有効であり, 治療として先行される. この症例では腸管脱出に対する処置を先行せざるをえなかったが, 術中高温生食による十分な洗浄などが毒素に対しても有効であったと考えられた.
著者
齋藤 克憲 橋田 秀明 岩代 望 大原 正範 石坂 昌則 近藤 哲 加藤 紘之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1829-1833, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
24

今回我々はIIc型早期胃癌と診断され, 病理組織所見にて直下にアニサキスによる好酸球性肉芽腫を認めた1例を経験したので報告する. 症例は77歳の男性. 20年来の胃潰瘍の診断にてH2-blocker, 消化性潰瘍治療薬を内服していた. 平成14年9月, 定期検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部大彎側にIIc+III型病変を指摘, 組織生検にてgroup Vと診断され, 深達度がsm以上の可能性があるとして外科紹介, 幽門側胃切除術を施行した. 腫瘍は0.8×0.8cmのIIc型乳頭腺癌で深達度sm1, またそのほぼ直下の固有筋層内に好酸球性肉芽腫を認め, この中心部にアニサキス虫体を認めた. 連続切片からアニサキスはIIc部分から刺入したと思われた. アニサキスが癌や潰瘍など粘膜の脆弱部から胃壁内に進入する可能性はすでに指摘されているが, 本症例のごとく慢性化した場合, 虫体が鏡視下に視認出来ないため好酸球肉芽腫を癌の一部と誤認する可能性があり, 診断上注意が必要である.
著者
小島 博文 小尾 芳郎 阿部 哲夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.182-187, 2014-03-01 (Released:2014-03-26)
参考文献数
14

症例は33歳の男性で,刑務所服役中に統合失調症を発症した.刑務所を出所後に暴飲暴食し,意識障害を主訴に救急搬送された.来院時の単純X線検査で著明な胃拡張を認めたが,腹部症状は無く精神科入院となった.入院後7日目に吐血,血圧低下,腹痛を認め,当科紹介となった.身体所見上,腹部は著明に膨隆し,板状硬を呈していた.腹部造影CTで胃内に多量の残渣と胃壁内ガス像,肝内門脈ガス像を認めた.急性胃拡張による胃壊死が疑われ,緊急手術を施行した.術中所見では,胃壁が菲薄化しており,胃のほぼ全体が壊死に陥っていた.また,胃壁に気腫状変化を認めた.胃の温存は不能と考え,胃全摘術を施行した.術後,敗血症と肝不全を合併したが集学的治療により回復し,第47病日に精神科転科となった.胃は血流豊富な臓器であり壊死に至ることはまれである.過食後の急性胃拡張による胃壊死の1例を報告する.
著者
水野 翔大 篠崎 浩治 藤田 翔平 笹倉 勇一 田口 昌延 寺内 寿彰 木全 大 古川 潤二 小林 健二 尾原 健太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.234-244, 2018-03-01 (Released:2018-03-28)
参考文献数
65

症例は58歳の男性で,近医において50歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,アミノサリチル酸製剤,ステロイドで治療が開始された.ステロイド依存例であり免疫調節薬,インフリキシマブ,血球成分除去療法が導入されたが寛解に至らず外科的治療が検討されていた.今回,直腸穿孔による汎発性腹膜炎を発症し緊急手術を施行した.直腸Ra前壁に穿孔を認めHartmann手術を施行した.切除腸管の病理検査で異型リンパ球の全層性浸潤像と腸管壁全層の線維化を認めた.免疫染色検査の結果,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.切除腸管の粘膜部分に活動性の潰瘍性大腸炎を示唆する所見は目立たず,悪性リンパ腫に起因する直腸穿孔が示唆された.潰瘍性大腸炎と悪性リンパ腫の合併はまれであり,潰瘍性大腸炎治療薬によるEpstein-Barr(以下,EBと略記)ウイルス感染の合併と悪性リンパ腫の発生の関連が報告されている.本症例でも病変部へのEBウイルス感染を認め,その関連が示唆された.
著者
小西 文雄 古田 一裕 斉藤 幸夫 片岡 孝 柏木 宏 岡田 真樹 金澤 暁太郎 菅原 正 篠原 直宏
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.789-796, 1994 (Released:2011-06-08)
参考文献数
30

直腸癌に対する術前放射線化学治療において, 温熱療法を加えることによる腫瘍壊死効果の増強について検討した.A群 (18例) では放射線温熱化学併用治療を, B群 (18例) では放射線化学治療を施行した.放射線照射は総量40.5Gy, Whole Pelvisの照射野で施行した.温熱療法は, 8MHzRadiofrequencyを用いて1回50分計5回施行した.また, 5-nuorouracil坐薬1日200mg計3,400mgを投与した.治療前後で施行した下部消化管注腸造影における腫瘍の縮小率の平均値は, A群では31.8%, B群では18.2%であり, A群において有意に縮小率が高かった.切除標本の病理組織学的所見における治療効果を, 胃癌取扱い規約の規準に従って評価した結果, A群ではB群と比較して有意により高度な腫瘍の変性や壊死が認められた.以上より, 温熱療法を併用することによって治療効果が増強されることが示され, 放射線温熱化学併用治療は直腸癌の術前治療法として有用であろうと考えられた.
著者
杉山 貢 徐張 嘉源 山中 研 Keiichi WATANABE 施 清源 山本 俊郎 門口 幸彦 片村 宏 佐藤 芳樹 土屋 周二
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.2129-2133, 1986 (Released:2011-03-02)
参考文献数
22

胃切除後の107例に対して無選択的にmicrodensitometry法による骨塩量の測定を行い, 胃切除後骨障害の発生頻度をまたCa infusion試験によりその病態を研究した.胃切除後骨障害の発生率は38%であり, 術後5年以上経過すると, 胃全摘後では62%に, 胃部分切除後では55%に骨代謝異常を認めた.胃切除後, 骨障害度の初期になるのにかかる期間は胃全摘後で1年6ヵ月, 胃部分切除後では5年であった.Ca infusion試験によると, 胃切除後の骨障害例とくに重症例の多くは, Nordinの基準による28%以下で骨軟化症を呈していた.
著者
世古口 英 近藤 真治 徳丸 勝悟
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.661-664, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
10

術後直腸膀胱窩膿瘍に対し, 経皮経膀胱膿瘍穿刺吸引が奏功した1例を報告する. 症例は84歳の男性で, 腹痛, 嘔吐を主訴に来院した. 小腸腫瘍による不全イレウスと診断し小腸部分切除術を施行した. 術後第17病日, 下腹部不快感と血液検査上炎症所見の増悪を認めたため腹部造影CT を施行し, 術後腹腔内膿瘍が疑われた. 経皮経膀胱的に膿瘍を穿刺し十分洗浄後穿刺針は抜去した. 処置翌日より臨床症状の改善を認め, 術後第30病日, 処置後第14病日退院となった. 術後直腸膀胱窩膿瘍は具体的報告例が少なく, 文献的考察を加え報告する.
著者
成田 匡大 花田 圭太 松末 亮 畑 啓昭 山口 高史 大谷 哲之 猪飼 伊和夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.513-520, 2017-07-01 (Released:2017-07-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:慢性疼痛は,成人鼠径ヘルニア術後晩期合併症として認識されてきているが,その治療法は確立していない.本研究の目的は,当科にて作成したアルゴリズムを用いて難治性慢性疼痛の治療を行い,その妥当性を実際の治療成績を下に検証することである.方法:2013年3月から2016年8月の間に,術後3か月以上たっても鎮痛剤内服でコントロールできない疼痛を有する難治性慢性疼痛症例に対して当科で作成したアルゴリズムに従って治療を行った.結果:体性痛6例,神経因性疼痛4例,精巣痛1例の11症例に対してアルゴリズムに従って治療を行い,8症例で疼痛が消失した.8症例のうち5例はトリガーポイントもしくは腸骨鼠径および腸骨下腹神経ブロック注射による侵襲的内科的治療で治癒し,3例は手術にて治癒した.結語:鼠径ヘルニア術後難治性慢性疼痛の治療では,疼痛の種類(体性痛と神経因性疼痛)を診断し,積極的な治療介入を行うが重要である.当科で作成したアルゴリズムを使用することにより,複雑な病態である鼠径ヘルニア術後難治性慢性疼痛症例に対しても外科医主導で治療することが可能である.
著者
豊坂 昭弘 村田 尚之 三嶋 康裕 安藤 達也 大室 儁 関 保二 金廣 裕道
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.417-423, 2009-04-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
28

日本で受けた男性性転換手術後に晩期合併症として超高位の直腸膣瘻を経験し局所的に閉鎖しえたので報告する.患者は33歳で,7年前に男性から女性への性転換手術を受けた.3年前から人工膣から出血,排便をみている.注腸および内視鏡検査で,直腸S状部の超高位の直腸と人工膣が大きな瘻孔を形成していた.まず人工肛門を造設し,2か月後経仙骨的経路で手術を施行し癒着に難渋したが瘻孔を閉鎖した.術後は順調に経過し,2か月後人工肛門を閉鎖した.現在術後1年3月経過し再発はなく,美容的にも満足している.術後は再発の恐れから膣は使用されていない.本例は解剖学的に通常では発生しえない直腸S状部の超高位の直腸膣瘻であり,このような超高位の直腸S状部の直腸膣瘻の報告は内外とも見られず,局所的手術で修復した報告も見られないので報告した.本例での瘻孔の原因は人工膣内へ狭窄防止用ステントの使用による圧迫壊死であった.
著者
江川 新一 北村 洋 坂田 直昭 乙供 茂 阿部 永 赤田 昌紀 元井 冬彦 力山 敏樹 片寄 友 海野 倫明
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.466-472, 2009-05-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

背景と目的:Frey手術は慢性膵炎に対して膵頭部芯抜きと膵管空腸側々吻合を行う侵襲が少なく疼痛改善効果の高い術式であるが,まれに再燃して再手術を要する.教室で行ったFrey手術後の長期経過中に慢性膵炎再燃に対して再手術を必要とした症例から適切な手術手技ならびに術後管理のあり方を考察する.対象と方法:1992年3月から2008年4月までの間に当科において慢性膵炎に対してFrey手術を施行した66例.術後早期合併症,再燃の形式と頻度,再手術までの時間,禁酒の有無,再手術手技を検討した.結果:術後早期の合併症発生率は10例(15.2%)で,1例は術後消化管出血のため再手術による止血を要した.術後在院日数中央値は19.5日であった.追跡対象62例(観察期間中央値45.5か月,追跡率83.9%)のうち慢性膵炎再燃による再手術は8例に施行され,1例に胆管十二指腸吻合,1例に膵頭十二指腸切除術が施行された.膵尾側の膵炎再燃・仮性嚢胞形成が最も多く,5例に膵尾部切除,1例に嚢胞空腸吻合が施行された.晩期の再手術例は特発性膵炎の1例を除き全例禁酒できない男性であり,再手術までの平均期間は約2年であった.膵尾部切除後に膵断端を空腸脚で被覆することが有効だった.考察:Frey手術後の再手術原因は膵尾部の炎症再燃が多く,飲酒と有意に相関する.炎症再燃を繰り返す場合は有効な再手術が必要である.