著者
三畑 光代 戸田 真司 小宮山 まり子 串田 守 宋 文群 荒川 浩久 内村 登 飯塚 喜一
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.294-303, 1999-07-30 (Released:2017-11-12)
参考文献数
16

飲料水には微量ミネラル元素であるフッ素が含まれている。日本の水道法の水質基準によれば,フッ素は0.8ppmを超えてはならないと規定されているが,低濃度フッ素飲料水にう蝕予防的価値はない。そこで,全国より集めた飲料水サンプルのフッ素濃度を測定した。本大学の学生に,帰省地の飲料水を採取し,必要事項を質問票に記入したうえで持参するように依頼した。フッ素イオン電極にてサンプル中のフッ素濃度を測定した。それとともに,水道統計資料から浄水場における飲料水のフッ素濃度を調べた。370サンプルの飲料水のうち,数のうえでは上水道が圧倒的に多く,次に井戸水,簡易水道という順であった。全サンプルの平均フッ素濃度は0.076ppmであり,最高値は上水道の0.55ppmで,最低価はすべての種類のサンプルにおいてみられた0.01ppm未満であった。さらに,昭和59年から平成8年度までの水道統計資料によれば,全国の浄水場における水道水平均フッ素濃度は徐々に低下する傾向を示し,平成8年度の平均で0.093ppmであった。以上のことより,ヒトが歯の健康のために飲料水から摂取するフッ素は不足していることは明らかである。今後は食品から摂取するフッ素量を考慮しながら,フッ化物の全身応用の実施を検討するべきである。