- 著者
-
内田 好則
下川 敬之
- 出版者
- 宮崎大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1992
本研究はアリルイソチオシアネート(AITC)がエチレン作用の阻害剤ないしは抑制剤であるという観点から、ミカン等の果樹、トマト等の野菜およびスイ-トピー等の花きを使用し、これらに対するAITCの影響を検討し、エチレン作用に対するAITCの作用機構の解明を行い、鮮度保持を含む品質保持技術としての応用を検討した。ウンシュウミカンに対してAITC処理を行った結果、呼吸量の増加がみられ、エチレン処理によりクロロフィル分解(脱緑)は進行し、それをAITCが抑制すること、この脱緑の程度(L+b)/2+aとクロロフィラーゼ活性との間に高い正の相関関係があること、クロロフィリドaベルオキシターゼと脱緑の度合との間には、相関関係は認められないことを明らかにした。その作用は麻酔をかけたような状態を示した。トマト果実にAITCを処理した場合、着色の抑制および果実硬度の軟化の抑制を生じた。処理時間は50分、処理濃度としては5u1/1から効果が顕著であった。トマト子葉の上偏生長に対するAITCの阻害は不(反)拮抗阻害作用の傾向を示した。AITCを先に5分処理するとその後エチレン処理しても上偏生長は起こらず、上偏生長を起こす場合はエチレンを先に6時間以上処理する必要があった。エチレンの関与が少ない切り花のキクではAITCの品質保持効果は観察されなかった。エチレンの関与が大きいスイ-トピーの花では鮮度保持効果はみられなかったが、AITC処理により花の退色を抑制した。現時点での応用としてはSTSとAITCの併用処理が効果的である。作用機構の解明のため、AITCでオジギソウを処理し、振動傾性阻害を観察した。この結果、AITCは果樹および野菜でも観察されたように、麻酔症状様に作用し、一定時間経過後回復がみられた。