著者
足立 勝 中林 健一 東 理恵 倉田 裕文 高橋 芳弘 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1139-1145, 1999-11-15
被引用文献数
4 7

暗所下においてエチレン処理したカイワレダイコン(Raphanus sativus L.)子葉の脱緑機構を明らかにするために, クロロフィルαの分解を子葉のタンパク質を用いて検討した.粗酵素はエチレンにより脱緑が誘導されたカイワレダイコン子葉から調製した.クロロフィルα分解酵素は, H_2O_2-2, 4-ジクロロフェノール/pクマリン酸依存であった.クロロフィルα分解反応の最初の分解産物はHPLCとHPTLC分析により分析された.その分解産物が標準C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαと同定された.C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成反応はアスコルビン酸(2mM)そしてKCN(2mM)の添加により完全に阻害された.しかし, 嫌気性条件下では阻害されなかった.つまり, C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成酵素は, H_2O_2を利用した1原子酸素添加反応を触媒するペルオキシゲナーゼまたは, ペルオキシゲナーゼ作用を持つペルオキシダーゼの一種であると考えられる.さらに, 三次元蛍光分光解析により無色の蛍光クロロフィル代謝産物(FCC : Ex 350 nm/Em 455 nm)がクロロフィルαの分解につれて生成されることが明らかとなった.以上の結果よりクロロフィルαはカイワレダイコン子葉より調製したタンパク質により, 以下の反応で分解されることが示唆された.Chl α→C-13^2-HO Chl α→→colorless Rs-FCC(無色の蛍光クロロフィル代謝酸化開環産物).
著者
内田 好則 下川 敬之
出版者
宮崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究はアリルイソチオシアネート(AITC)がエチレン作用の阻害剤ないしは抑制剤であるという観点から、ミカン等の果樹、トマト等の野菜およびスイ-トピー等の花きを使用し、これらに対するAITCの影響を検討し、エチレン作用に対するAITCの作用機構の解明を行い、鮮度保持を含む品質保持技術としての応用を検討した。ウンシュウミカンに対してAITC処理を行った結果、呼吸量の増加がみられ、エチレン処理によりクロロフィル分解(脱緑)は進行し、それをAITCが抑制すること、この脱緑の程度(L+b)/2+aとクロロフィラーゼ活性との間に高い正の相関関係があること、クロロフィリドaベルオキシターゼと脱緑の度合との間には、相関関係は認められないことを明らかにした。その作用は麻酔をかけたような状態を示した。トマト果実にAITCを処理した場合、着色の抑制および果実硬度の軟化の抑制を生じた。処理時間は50分、処理濃度としては5u1/1から効果が顕著であった。トマト子葉の上偏生長に対するAITCの阻害は不(反)拮抗阻害作用の傾向を示した。AITCを先に5分処理するとその後エチレン処理しても上偏生長は起こらず、上偏生長を起こす場合はエチレンを先に6時間以上処理する必要があった。エチレンの関与が少ない切り花のキクではAITCの品質保持効果は観察されなかった。エチレンの関与が大きいスイ-トピーの花では鮮度保持効果はみられなかったが、AITC処理により花の退色を抑制した。現時点での応用としてはSTSとAITCの併用処理が効果的である。作用機構の解明のため、AITCでオジギソウを処理し、振動傾性阻害を観察した。この結果、AITCは果樹および野菜でも観察されたように、麻酔症状様に作用し、一定時間経過後回復がみられた。
著者
馬 旭偉 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.261-269, 1998-03-15
被引用文献数
6 5

本研究では, エチレン処理したバナナ果実(Musa sapientum L.)の果皮より調製した粗酵素液中に, クロロフィルaを分解する酵素が存在することを明らかにした.また, この酵素とその反応について次のことを明らかにした.1) H_2O_2と2, 4-DCPが必要なことからペルオキシダーゼであること, 2) Tiron, Mn^<2+>, hydroquinone, L-ascorbate sodium, n-propyl gallate, salicylhydroxamic acid, KCN, NaN_3で阻害されるため, この酵素反応にO^-_2とラジカルが関与していること, 3) 2, 2'-bipyridyl, Tironにより阻害されることは, この酵素反応にFe^<2+>あるいはFe^<3+>が関与していること, 4) NaN_3に対する阻害程度の違いからクロロフィル分解ペルオキシダーゼはグアヤコールペルオキシダーゼとは別のものであること, 5) pHのピークが5.2, 5.8と6.4にあることから, アイソザイムが存在すること, 6) タンパク質量に対する反応量は直線的であること, 7)基質のKm値は16.5μMであること, 8) H_2O_2のKm値が20.44μMで, この値は既知のペルオキシダーゼに比べ低い値である(高い親和性をもつ)こと, 9) これらの値と性質は, この酵素が生体内で作用している可能性があること.さらに, 反応液の可視部でのスペクトルの変化, 特に, 経時的な波長のシフトとソーレーバンドの消失と差スペクトルの結果から, クロロフィルaは開環したクロロフィル代謝産物(Ex 350nm, Em 465nm)に分解するものと考えられる.