著者
内田 照久
出版者
大学入試センター
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

外国語リスニング・テストなどの音声メディアを利用した試験を実施する場合,実施環境が異なる試験会場間での公平性の確保が急務となっている.このような状況を受け,提示される音声に重畳する背景雑音の影響を検討するための基礎研究を行った.本研究では,背景雑音の影響を分析的にとらえるため,日本語特殊拍(長音,促音,撥音)と閉鎖破裂子音(t,k)を対象とする音韻とした.ここでの日本語特殊拍は,音声信号としては比較的定常的な特徴を示す.一方,破裂子音は動的な特性を持ち,短時間の内にその波形概形が変移するものである.本研究ではこれらの音韻を含む単語音声において,当該の音声区間をコンピュータ上で雑音置換し,その音声の聴覚的な音韻修復の達成度を指標とした聴取実験を行なった.その結果として,下記の点が見出された.1.特殊拍などの定常的な音声の場合,原音声の波形振幅が小さく,外部雑音で妨害される可能性の多い音韻の方が,聴覚的に音韻修復される可能性が高い.2.破裂子音/t/を雑音置換した場合,音韻修復は/k/の方向に偏移する.3.単語提示で特定の音韻を聞き取らせるテスト形式には熟考が必要である.付記 本研究の結果の一部は,日本教育心理学会第38回総会で発表した.