- 著者
-
内田 直之
- 出版者
- 一般社団法人 日本血液学会
- 雑誌
- 臨床血液 (ISSN:04851439)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.5, pp.531-536, 2016 (Released:2016-06-04)
- 参考文献数
- 43
日本の臍帯血移植(CBT)実施件数は,年間1,200件を超え,2015年には累積実施件数12,853件に到達し,全世界のCBTの約1/3が実施されている。欧米人より体格が小柄であることや,保険制度の違いで費用が欧米より安いことが,日本でのCBT件数増加の理由として挙げられるが,近年のCBT特有の問題点の克服が,さらなる増加に寄与している。高い生着不全率へのドナー特異的な抗HLA抗体や,血球貪食症候群の影響が明らかとなった。CBT後早期に細菌感染症やHHV-6脳炎が,骨髄・末梢血と比べて高頻度であることも明らかとなり適切な対策の開発が進んでいる。CBT後の再発頻度は他の幹細胞源と変わらないことも明らかとなってきた。最近の国内のレジストリーデータの解析でも,CBTは既に他の幹細胞源と遜色ない成績となっており,今後さらなる発展が期待される。