著者
中原 宣子 森田 夏実 内田 雅子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1215-1221, 2003

日本透析医学会に登録された2,818の透析施設から無作為に300施設を選び, 施設および看護師個人を対象に郵送式アンケート調査を行った. 今回, 看護師個人調査の結果に基づき, 考察を加えながら日本の透析医療と看護の方向性を探った.<br>透析医療に従事する看護師は, 在宅透析など患者自身が積極的に透析医療に参加し, 主体性を取り戻す方向が望ましいと考えている. これは, 最近の患者の透析医療への姿勢に対して日常的に危機感を感じていること, 医療においても商業的サービスがなされようとしていることに対する専門職としての直感的な疑問が今回の結果に表れていると思われた.<br>高齢透析患者については今後も増加が予測されるため, 通院しやすい環境を整えること, 介護保険制度の効率的な利用が望ましく, 超高齢患者の透析導入は慎重論が記された. また, 国内の医療経済事情と透析医療費増大に対する圧縮政策に関連して, 透析患者の一律負担金ゼロについては疑問を有する声が多く, 適切な医療費の負担導入が指摘された.<br>看護の方向性については看護師は治療方針や実践に積極的に参加し, 患者の自己管理や生活指導を主体的に行うべきであるとされた. しかし, 看護師は実際に多くの業務を担っており, その繁忙さから人員不足を感じている. 看護効率と安全性を高めるためにも業務分担の見直しが必要である. また, 看護師はこれらの問題に積極的に関わるための専門性を高める必要性が述べられている. 透析医療に従事する看護師は女性が91%を占めており, 社会あるいは家庭の役割も担うジェンダー問題とも切り離せない. 個々の人生の時期における経験を積みながら人間性を高め, 可能な限り自己研鑽を行い, 看護の質を高めていく努力が重要である.