著者
木村 香里 平岡 弓枝 内藤 陽一 平田 真 吉田 輝彦 桑田 健
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.94-97, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
18

消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;GIST)は希少がんであり,その一部ではSDHBに生殖細胞系列病的バリアントを認める.SDHBは,遺伝性パラガングリオーマ・ 褐色細胞腫症候群(hereditary paraganglioma/pheochromocytoma syndrome;HPPS)の原因遺伝子の一つとして知られている.今回の症例は30代男性で,胃GISTと診断され,手術検体の免疫染色にて,SDHB蛋白質消失を認めた.HPPS鑑別のため遺伝学的検査を実施し,SDHB病的バリアントを認めた.診療科横断的にHPPSサーベイランス体制を整え,GISTに対する通常診療に加え褐色細胞腫・パラガングリオーマ(pheochromocytoma/paraganglioma;PPGL)のサーベイランスを開始した.また,遺伝性であることの心理的負担があったため,フォローアップ遺伝カウンセリングを行った.若年発症GISTで免疫染色にてSDHB蛋白質消失の所見がある場合,HPPSの可能性を考え遺伝学的検査を検討することが有用である.また,サーベイランスの有用性に関するエビデンスの蓄積と継続した心理社会的支援が求められる.