著者
星野 陽子 住谷 昌彦 日下部 良臣 佐藤 可奈子 冨岡 俊也 小川 真 関山 裕詩 山田 芳嗣
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.98-102, 2012-06-25
参考文献数
11

エピドラスコピーは腰部脊柱管狭窄症などによる痛みに対して,硬膜外腔の癒着剥離および神経根周囲の洗浄を目的として行われる治療手技である.このようなエピドラスコピーの利用法とは異なり,腰部脊柱管硬膜外腔内嚢胞性病変による腰下肢痛に対して,エピドラスコピーを造影のために使用し,Tuohy針による穿刺によって嚢胞性病変の縮小と痛みの緩和に成功した1症例を経験したので報告する.症例は52歳の女性である.半年前から左臀部痛および左下肢痛を発症し,腰椎MRI所見から第4腰椎硬膜外腔内の嚢胞性病変による第5腰髄神経根の圧迫が痛みの原因と診断した.嚢胞性病変の成因としては第4/5腰椎椎間関節滑液嚢胞が示唆された.まず行われた低侵襲治療である椎間関節ブロック,腰部硬膜外ブロック,薬物療法では痛みは軽減しなかった.そこで,エピドラスコピーを用いて直視的に嚢胞を穿破しようと試みた.しかし,エピドラスコピー本体での穿破は硬度が足りず成功しなかったため,硬膜外腔の局所的な造影で不染部から嚢胞の位置を同定し,第4/5腰椎椎間板間隙からTuohy針を穿刺し嚢胞内容の減量に成功した.穿刺直後から痛みは軽減し,その後の腰椎MRIでは嚢胞性病変が縮小した.
著者
大淵 麻衣子 住谷 昌彦 平井 絢子 佐藤 可奈子 冨岡 俊也 小川 真 辛 正廣 関山 裕詩 山田 芳嗣
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.44-47, 2011 (Released:2011-06-04)
参考文献数
10

慢性痛の重大な併発症として睡眠障害が挙げられるが,睡眠障害は患者の自覚的な訴えやアンケート調査によってしか評価されていない.睡眠・覚醒リズムを判定することができる腕時計型高感度加速度センサー(actigraphy®)を用いて慢性痛患者の睡眠障害を脊髄電気刺激療法の前後で客観的に評価した2症例を報告する.症例1は腕神経叢引き抜き損傷後痛み,症例2は閉塞性動脈性硬化症による足趾切断術後の難治性の痛みであった.いずれも薬物療法抵抗性の痛みであり,深刻な睡眠障害を併発していたことを客観的に評価できた.両症例とも脊髄刺激療法の導入によって睡眠効率(就床から起床までの時間に対する実睡眠時間の割合)が改善した.難治性痛みの治療は痛みだけでなく quality of life(QOL)の改善が重要であるが,睡眠障害の客観的評価は新たな評価基準に成りうる可能性がある.