著者
谷口 恭章 出口 芳樹 斉田 勝 野田 寛治
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.433-446, 1994 (Released:2007-02-06)
参考文献数
51
被引用文献数
7 8

皮膚刺激薬(counterirritants)の外用鎮痛作用を各種疼痛モデルを使用して検討した.マウスでのホルマリン疼痛モデルにおいて,ホルマリン注射後5分以内に認められる一過性の疼痛反応(early phase:E相)に対して,l-メントールおよびペパーミント油はその外用適用により明らかな鎮痛作用を示した.サリチル酸メチルやdl-カンファーにおいても軽度ながら鎮痛作用が認められた.これとは対照的にインドメタシンの経口投与はホルマリン注射後20分前後をピークとする持続性のある疼痛反応(late phase:L相)に対してのみ鎮痛作用を示した.麻薬性鎮痛薬であるモルヒネは両相に対して明らかな鎮痛作用を示した.E相でのl-メントールの鎮痛作用はナロキソンおよびデキサメタゾン処置により顕著に拮抗され,ベスタチンにより増強された.また,l-メントールはマウスの熱板法やラットの後肢加圧法においても鎮痛作用を示した.一方,l-メントールはラットのカラゲニン足浮腫に対しては軽度の抑制作用を示したが,in vitroでのプロスタグランジンE2生合成阻害作用は示さなかった.また,l-メントールはモルモットにおいて軽度の表面および浸潤麻酔作用を示した.これらの知見により,皮膚刺激薬であるl-メントールの外用鎮痛作用は直接的な抗炎症作用によるものではなく,その作用機序として内因性オピオイド系の活性化とともに局所麻酔作用を含む局所効果が一部関与する可能性が示唆された.
著者
出口 芳樹
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.156, no.3, pp.171-177, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
16

開発候補品の臨床における中枢神経系の副作用予測のために,非臨床試験で用いられるIrwinの変法や機能観察総合評価法(FOB)は,肉眼的観察が中心で,観察者の観察能力に大きく依存する.そのため,観察者の適切な訓練や所見の目合わせが非常に重要であり,方法や判断基準についても統一的な見解を共有する必要がある.また,動物福祉への配慮やバイオ医薬品および抗がん薬の開発の増加などから安全性薬理評価を一般毒性試験に組み入れる機会が多くなっている.特に中枢神経系の評価は,比較的容易に,経時的に一般毒性試験に組み込むことが可能である.しかし,検出力を減じず,信頼性のあるデータが取得できるように試験をデザインする必要がある.このように医薬品開発において,信頼性の高い中枢神経系への影響を検出するためには,中枢神経系評価の技術レベルの向上および技術の継承が大切である.
著者
玉井 朝子 出口 芳樹 安楽 理香 沼田 洋輔 洲加本 孝幸 戸門 洋志 永田 良一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5178, 2007 (Released:2007-06-23)

<目的>安全性薬理コアバッテリーとは生命機能における薬物の作用を検討することであり,新薬開発に必須とされている。通常,心血管系、中枢神経系及び呼吸器系が安全性薬理コアバッテリーにおいて試験すべき項目となっている。今回、Whole Body Plethysmograph(WBP)法を用い、ラットに各種薬物を投与して、呼吸機能パラメーターに及ぼす影響を評価した。<実験方法>実験には、8週齢の雄性SD系ラットを用い、Morphine hydrochloride、Baclofen及びChlorpromazine hydrochlorideを経口投与後、呼吸機能測定システム(ソフトウェア:Ponemah Physiology Platform、Data Science International Inc.)を用いて、呼吸機能パラメーター(呼吸数、1回換気量、毎分換気量)の測定及び解析を実施した。<結果>Morphine hydrochloride(100 mg/kg)は、呼吸数及び毎分換気量を増加させたが、1回換気量は変化させなかった。Baclofen(30 mg/kg)は呼吸数を減少させ、1回換気量を増加させたが、毎分換気量は変化させなかった。Chlorpromazine hydrochloride(100 mg/kg)は、呼吸数及び毎分換気量を減少させたが、1回換気量は変化させなかった。<結論>WBP法を用いてラットにおける呼吸機能に対する薬物の作用を評価できることが示唆され、本法は安全性薬理コアバッテリーの評価法として有用であると考えられた。