- 著者
-
前城 淳子
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
本研究は琉歌の中でも詠み歌の琉歌作品の研究を進めるための基盤作りを目的としている。本年度は前年度までに行った(1)詠み歌作品の収集と整理、(2)各地に保存されている琉歌集の収集を引き続き行うとともに、研究の取りまとめを行った。(1)では大正期の新聞(『琉球新報』『沖縄毎日新聞』)に掲載された琉歌作品の収集とデータベース化を中心に行った。新聞に掲載された琉歌を、1結社詠(結社単位で新聞に発表されたもの)、2琉歌大会詠(全島規模で開催された琉歌大会の詠草が新聞に掲載されたもの)、3募集歌(新聞社側の募集に応じて天長節やお正月などに応募された作品)、4寄稿歌(主に個人で琉歌を新聞に寄稿したもの)の4つに分類し整理した。また、それぞれの分類ごとの特徴等について「大正期の琉歌-『琉球新報』『沖縄毎日新聞』をもとに-」としてまとめた。(2)では天理大学図書館、沖縄県立図書館や琉球大学付属図書館など沖縄県内の図書館に所蔵されている琉歌集の調査を行った。天理大学図書館に所蔵された「琉歌集」は琉歌を読むもの(文芸)として編纂したものであり、本研究にとって重要な資料である。春、夏、秋、冬、恋、雑、仲風の7つの部立をもつこの歌集は、同じ部立構成をもつ『古今琉歌集』との詳細な検討が今後必要であろう。また、琉球大学付属図書館に所蔵されている「喜納誌」と記された「琉歌集」は節名が記されていないことから詠み歌的な歌集であると思われるが、部立が示されていないためどのような方針で歌集が編纂されたか不明である。本研究によって大正期の新聞に掲載された琉歌約4,000首の収集と整理が行われた。これによって詠み歌琉歌研究の基礎資料が整ったことになる。また、各地に保存されている琉歌集の収集と整理が進められ、60余の琉歌集を確認することができた。