著者
前川 明日彩 細谷 誠 片岡 ちなつ 新井 雄裕 浅野 和海 森 隆範 野口 勝 神崎 晶 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.150-156, 2019-04-28 (Released:2019-06-01)
参考文献数
6

要旨: 当院で人工内耳手術を施行し, 定期的な診療を続けている成人人工内耳装用者17名を65歳以上の高齢群と65歳未満の若年群に分け, 手術前後に実施した東大式エゴグラム (Tokyo University Egogram, 以下 TEG) の結果について検討を行った。 さらに, 失聴期間2年未満群と2年以上群での検討も行った。 全症例及び高齢群で, 術後「他者本位・自己抑制的・自己否定的」な傾向が低下した。 若年群では「自由・積極的・自己肯定的」な傾向に上昇する様子がみられた。人工内耳を装用して音を聴取することで, 高齢者はより自律的に, 若年者はより能動的になる傾向があると考えた。 失聴期間別の検討では, 失聴期間2年以上群で, 術後の「他者本位・自己抑制的・自己否定的」な傾向が低下した。音が聴取可能になり活気が出たため, 抑制的な自我状態が軽減したと推察した。高齢者や失聴期間の長い症例においても, 人工内耳導入により自己否定傾向を軽減させる効果があると考えられた。