- 著者
-
神崎 晶
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.124, no.3, pp.192-196, 2021-03-20 (Released:2021-04-03)
- 参考文献数
- 10
急性感音難聴の診療のてびき, 耳鳴診療ガイドラインが作成されているが, 本稿ではその内容を抜粋し, 最近の文献報告も含めて紹介する. 急性・慢性難聴, 耳鳴について診断アルゴリズム, 検査のポイントについて解説する. 難聴と耳鳴は合併することが多いことから一連の流れで検査, 診断を行うことが多い. まず原因疾患の診断を行う上で, 問診 (発症時期, 経過, 一側か両側か, 進行の速さ, めまいの有無), 耳鏡検査 (鼓膜所見など), 純音聴力検査を行うことになる. 難聴の診断では, 純音聴力検査では伝音, 感音, 混合性難聴を分類する. 伝音難聴があればインピーダンス検査, 感音難聴があれば語音聴力検査を実施する. 混合性難聴であれば上記2つの検査を実施する. また聴力型を確認することで鑑別が可能になる. 必要に応じて語音聴力検査, 他覚的検査 (耳音響放射, 聴性脳幹反応 (ABR), 聴性定常反応 (ASSR)) を行う. 急性感音難聴では突発性難聴, 外リンパ瘻などを疑うが, MRI で聴神経腫瘍, 脳血管障害など中枢疾患を除外する必要がある. 補聴器や人工内耳の適応決定に至るまでの検査も重要であり一定の基準を提示した. 耳鳴の診断では, 耳鳴の苦痛度を問う質問票である Tinnitus handicap inventory (THI) 改訂版を用いて評価する. THI が大きいほど重症度が高く, 治療に難渋する. 難聴の有無を確認するため, 純音聴力検査などを行い, 原因疾患を特定する. 耳鳴検査 (ピッチマッチ, ラウドネスバランス検査) で耳鳴の周波数と大きさを検査する. また, 耳鳴に伴って不安, うつ, 睡眠障害の合併は治療予後に影響を与えるので, 問診で確認することが重要である. 耳鳴に伴いやすい聴覚過敏についても言及した. 難聴, 耳鳴は多岐にわたり, 新たな診断基準の制定, 新しい疾患概念も増えている. また耳鳴治療概念の変化に伴い検査内容も変化していることから, 検査・診断について改めて整理し提示した.