- 著者
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窪木 拓男
前川 賢治
- 出版者
- 公益社団法人 日本補綴歯科学会
- 雑誌
- 日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.2, pp.117-125, 2021 (Released:2021-04-29)
- 参考文献数
- 32
われわれ歯科医は補綴治療を毎日患者に施しているが,その治療がどのような効果を患者に及ぼしているかを十分認識していない.たとえば,自立した地域在住高齢者においては,補綴治療の主目的は,口腔関連QOLの向上に加えて,介護予防,フレイル予防,認知機能低下予防であり,補綴治療による口腔機能の維持は多様な食物や栄養素を摂取するという観点から重要な意味があると言われている.本論説では,近年発表された質の高いシステマティックレビューと原著論文を精読し,地域在住高齢者においては,現在歯数が多いほど,生命予後が良好であること,また,現在歯数よりも機能歯数の方が生命予後に強く関連するという日本補綴歯科学会と東京都健康長寿医療センターの共同研究結果を紹介した.一方,日常生活動作がまだまだ保たれている前期要支援・要介護高齢者においては,歯列欠損の修復に加えて,栄養摂取強化と広義の摂食嚥下リハビリテーションが重要な意味を持つ.また,日常生活動作が著しく低下する後期要介護高齢者においては,食環境や食形態の調整,栄養補助食品の利用,多様な栄養摂取ルートの活用などが必要になる.これらの臨床エビデンスをライフステージに合わせて読み解くことにより,われわれ補綴歯科医の医学的,社会的な責務が,どのライフステージにおいても甚大であることを訴えたい.